こんにちは、#ひろとし課長#です。
某地方銀行で営業店管理職をやってます、現職です。
私は長年、事業再生のセクションに従事し、つい最近まで責任者をやっておりました。
これらの経験を、2022年より、「事業再生」をテーマにブログにて紹介しています。
ここ最近ご無沙汰しておりましたので、ひさびさに筆をとろうと思い、
テーマとしては、「アフターコロナの事業再生」について、
複数回のシリーズにわけて、私の思うところを紹介したいと思います。
まだまだ、コロナも沈静化したとはいえませんが、
ついに2023年5月には、「5類」に引き下げるという政府方針も決定し、
そろそろ、完全回復に向けてアクセルを踏みだすときかと。
ここに向かって、金融機関も中小企業を全力で支援しないといけません。
それでは参ります。
ゼロゼロ融資の返済がはじまりますが・・・
「ゼロゼロ融資の返済がはじまりますが・・・」
昨年来、いわゆる「ゼロゼロ融資」の据え置き期間が終了し、
いよいよ返済再開となると、多くの中小企業が資金繰りに窮するのでは、
などと、新聞や関係者等から疑問の声がよせられます。
信用保証協会からも、あらたな「伴走支援:借換保証制度(5年据え置き可能)」も創設され、
公も資金繰り支援対策をとっているようです。
当行も、行政機関などから「どのような対策をとるのでしょうか?」
というような問いかけをされるのですが、
私はいつもこのように答えています。
企業のCFが回復すまでは返済させません。
返済開始時期を延長させますので、心配ありません。
赤字企業に返済を求めるということは、資金繰り破綻を誘発させるようなもの。
コロナ前のCFに回復していない企業に対しては、返済猶予期間を延長する、
要するに、コロナ融資の条件変更を行えばよいのです。
据え置き期間が1年~3年と、当初契約したのだから、
その通り返済しないといけない、
というような立派な考えからなのでしょうか。
頑なに、この約定を守ろうという風潮?があるようです。
ですが、このコロナ禍が3年も続くなど、当初だれが想像できたでしょうか?
初めからわかっていたならば、みな5年の据え置き期間を選択しますよね。
当事者の企業だって、コロナ下において、単に手をこまねいている訳なく、
それなりの工夫と努力を行っています。
しかし、業種によっては、ウィズコロナでも大丈夫な業種と、
飲食・宴会といったいまだに強い影響を受け続けている業種など、さまざまなはずです。
すでに業況が回復してきて、返済ができる企業は約定通り返済すればよいし、
まだ赤字の先や、また回復はしてきているけど、
キャッシュポジションに余裕のない先は、
据え置き期間延長の条件変更をして、資金繰りを支援してあげればよいのです。
だって、コロナ資金、ゼロゼロ融資は、赤字見合い資金でしょ。
赤字の状態で返済など始めたら、赤字資金を投下した意味がないではないですか。
リスケ=ゾンビ企業?
そんなことしたら、「ゾンビ企業」を増やすだけだ。
税金を投下してまで救う必要があるのか?
こういう意見もよく聞きます。
たしかに、コロナ前からの業績不振企業で、
コロナ前から返済猶予してきた企業に対して、「ゼロゼロ融資」を対応した先も少なくありません。
業績不振で金融機関がリスケを繰り返すことで、延命している企業、
こうしたいわゆる「ゾンビ企業」と、
コロナ禍により赤字に転落し、まだ回復途上にいる企業、
また、コロナ前から業績不振で、経営改善に取り組んでいたが、
改善途上にコロナ禍に巻き込まれた「事業再生支援先」、とでは、それぞれ状況が異なるでしょう。
ご指摘の通り、やみくもにリスケを容認することは
金融機関としても認めるわけにはいきません。
企業にもそれなりの経営改善努力をしていただくことを条件に、延長をするということです。
また金融機関としては、将来は返済の正常化が図れる、という判断を前提に、
条件変更を認めるということです。
しかし、今回のコロナ禍は、業種によっては相当の痛手を負いました。
なにしろ、一瞬にして需要がすべて吹き飛んでしまったのですから。
数か月売上0という企業もあります。
痛恨の痛手を負った企業が、コロナ前までの業況を回復するには、
相当の時間を要すると思われます。
1年、2年で元の状態に戻るほど甘いものではないのです。
こうした状況を加味しながら、われわれ地域の金融機関は、
地元の中小企業、経営者と寄り添い、励ましながら、支援をしていくしかないのです。
企業側も努力しているので、もう少し長い目で見てやる必要があると思います。
さて、長年のいわゆる「ゾンビ企業」に対しては、
これまで同様に仕方がない、ではなく
ここで再度、経営者との目線合わせ、再建の覚悟を誓わせて、
真剣に取り組ませる、これしかないでしょう。
そうは言っても、われわれも民間企業ですから、
できることと、できないこと、ありますので、
再生ができないのであれば、資本主義の原則通り、退場いただくしかないと、考えます。
引導を渡す、退場を命ずる、これもメインバンクの仕事と考えます。
ただ単に、先延ばし、延命、ゾンビ企業を量産する、ということではありません。
条件変更先への対応方針について
金融機関サイドで、コロナ融資の条件変更を嫌がる理由として、
「条件変更」すると新規融資が出せなくなってしまう、という問題があります。
金融機関によって考え方は様々でしょうが、
政府系金融機関や、保証協会は結構そのように主張することが多いです。
まあ、当社にしても、昔はそのように厳格に考えていたような気がします。
しかし、企業が再生を果たしていくステージにおいて、
追加の運転資金、設備資金が必要となるのは当然です。
建設業を例にしてみると、資金調達ができなければ、
立替金が支払うことができず、新規に工事受注ができなくなってしまいます。
ホテル・旅館業、製造業など、追加の設備資金が調達できなければ、
再生、成長するまえに、競争力を失ってしまうだけです。
コロナ禍を含めた過去の赤字資金と、
アフターコロナに向けた新たな取り組みへの資金(運転・設備)については、
分けて考えてやらないと、事業再生など実現できるはずがありません。
既存債権を返済猶予していても、コロナ資金の条件変更対応したとしても、
今後の事業再生に資する前向きな資金については、「ニューマネー対応する」
当たり前だと思うんですが。
企業も頑張ってるんだから、
地に足付けて、金融機関のミッションを果たそうではないか。
結論
コロナ資金、ゼロゼロ融資の元金据え置き終了については、
CF赤字企業の場合は、条件変更して再猶予すべし。
企業のアフターコロナに向けた取組みのために必要とする前向きな資金については、
積極的に応援していく。
長年のゾンビ企業については、
今回ラストチャンスとして、真剣に改善に取り組ませるべし。
こんなことを強く感じているのですが、どうでしょうか。
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