" /> アフターコロナの事業再生を考える(その2) - 地方銀行員が語る「中小企業再生支援」の現場

アフターコロナの事業再生を考える(その2)

事業再生

こんにちは、#ひろとし課長#です。

(#ひろとし課長#)

某地方銀行で営業店管理職をやってます、現職です。

私は長年、事業再生のセクションに従事し、つい最近まで責任者をやっておりました。

これらの経験を、2022年より、「事業再生」をテーマにブログにて紹介しています。

今回も、前回に引き続き「アフターコロナ」をテーマに話を展開していきます。

コロナ下で金融機関が行ってきたこと

新型コロナウイルス感染症が急速に広まった2020年

「移動・往来の禁止」、「不要不急の外出禁止」、「3密回避」

ステイホーム、というスローガンのもと、

人との接触を徹底的に回避させることで、沈静化を図ろうとしたわけですが、

人が行動しない、人が接触しない

コロナという心理的な不安と、移動制限という物理的な拘束、

そりゃ、消費は大きく落ち込むに決まってます。

県をまたいだ外出は禁止屋内、混雑はNGとされ、

飲食店、ホテル、旅館業をはじめ、

交通インフラ、アパレル、服飾、アミューズメント、百貨店、結婚式場、などなど、

消費産業の多くが、致命的といわれるほどの大きなダメージを受けました。

こうした中、われわれ金融機関が行った対応とは、

「とにかく素早く中小企業に資金供給すること」、でした。

政府系金融機関の制度融資とともに、われわれ民間金融機関は、

信用保証協会の特別保証制度、いまでいう「ゼロゼロ融資」を徹底的に推進しました。

「どうなるかわからないから、とにかく借入できるだけ借入して、

終息するまで耐えなさい。」

取引先のお客さんにはこのように伝えて、とにかく融資実行をし続けました。

これら取引先の中には、真にこの制度資金が必要な先がほとんどでしたが、

中には、ゼロ金利なのでとりあえず借りておく、

これならばまだいいのですが、政府系金融機関からゼロ金利で調達して、

通常の融資金(有利子)を繰り上げ返済するような

反則ワザも、実際にありました。

また、既存融資をゼロリスケしている先、

さらに「破綻懸念先」に区分している先にまで、資金対応ができたのです。

※通常は「破綻懸念先」には新規融資はできません。

とにかくこの「ゼロゼロ融資」は、謝絶してはいけない、

というような風潮のもと、実行しまくってきたわけです。

(※実際には謝絶したケースも当然にあります)

このコロナ騒動も当初は「さすがに夏場には終息するでしょ」、

このように考えていたのですが、

そのうち、「なんとか早く終息してほしい・・・」

まさかここまで長期化するとは、思いませんでしたね。

ニューノーマル??

感染が落ち着いたり、また再び拡大したりを繰り返し、

これまで「コロナが終わったら」という言葉を合言葉に、

じっと我慢しては見たものの、いつまでたっても終わらない。

「こりゃ、本腰入れて長期戦で臨むか」

このように考えるようになりました。

そのうち、マスコミから、

「ニューノーマル」(新状態)という言葉が登場するようになりました。

「ニューノーマル」?

要するに、コロナ下での「新しい生活様式」のことを指すわけですが、

巣ごもりで耐えていたつもりが、いつのまにか、

人との接触を断たざるをえないことを逆手に、

非接触のサービス、ビジネス(在宅ワーク、ECサイト、家のみ、などなど)

どんどん登場、そして浸透していき、

しばらくすると、

「別に外出しなくたって、十分楽しめるし、満足できるし、このほうが楽でいいや」

という風潮になっていきましたよね。

私は思ったのです。

「果たして、取引先企業もじっと耐えるだけでいいのか?」

「コロナ終息後も、この生活習慣は変わらないのではないか?」

そして私は、取引先の社長にこのように伝えるようにしたのです。

#ひろとし課長
#ひろとし課長

「あなたの取引先は、コロナ終息後も同じように、

あなたの事業(サービス)を利用するのでしょうか?」

コロナ感染が終息すれば、

そりゃ旅行客、観光客、宴会客など需要は戻るだろうど・・・

コロナ蔓延下においては、やむを得ずに「非接触型」のサービスを体験してきた。

しかし、私もそうだが消費者は一度経験すると、

次回からそのサービスに対する抵抗感、ハードルは大きく下がるのである。

特に「ZOOM」などはホントに最たるもので、

これはDXブームにも乗り、コロナ終息後もビジネスにおいては主流となるはず。

地方に居住する我々は、首都圏への出張もしなくてもことが済んでしまう。

(実際に人口が増加している地域もでてきた)

そうすると交通費はもちろん、飲食代、接待交際費、

その他付随していたもろもろの消費は、当然失われていきます。

コロナ終息によっても、コロナ前まで100%復元するという業種など、ないのではないか?

#ひろとし課長
#ひろとし課長

「アフターコロナに向けて新たなビジネスモデルを検討しないと、生き残れませんよ」

アフターコロナのビジネスモデルを考える

取引先企業に対し、ゼロゼロ融資を一通り実行したのち、

当時、わが社の再生セクションの責任者であった私が取引先企業に指導してきたのは、

  • withコロナ」を生き残るために徹底的に経費の削減をする
  • 「afterコロナ」を見据えてビジネスモデルを転換する

この二つのことを真剣に考えるよう、取引先企業の社長に伝え、

わが社の行員には、取引先社長と一緒になって考えること、

を示達しました。

再生支援企業のなかには、ようやく業況が回復し、借入金が減少してきた矢先に、

コロナ禍によって、一気に借入金がかつての窮境状態の水準まで、

それどころか、それ以上に膨らんでしまった企業が多く見受けられます。

これまでなんとか返済をおこなってきたのですが、

コロナ資金調達による借入金の増加が負担となるだけでなく、

仮にコロナが沈静化し、通常営業活動となったとしても、

アフターコロナの「ニューノーマル」において、

これまでお客さんであった方々のうち、

何割かが戻ってこなかった場合、

計画で描いていた売上高、利益水準を確保することができず、

コロナ前の返済約定は履行することができなくなります。

なんとか再生に向けて伴走支援を行ってきた取引先に対しても

支援方針を見直さざるをえなくなるのです。

そうならないためにも、

いいまだからこそ、アフターコロナを考えましょう。

じっと我慢しているだけでは思考停止です。

#ひろとし課長
#ひろとし課長

アフターコロナを見据えてビジネスモデルを転換する、これを一緒に考えましょう。

ビジネスモデル転換に必要とする資金については、当社は前向きに対応します。

このようなことをアナウンスして回りました。

それにもかかわらず、結局、なにもせず、というか、なにもできず、

ただただ、コロナ資金を赤字で食いつぶし

おかわり(追加金融支援)の資金もついに使い果たしてしまった企業も、

残念ながら現れ始めました。

はたしてコロナ禍によるもの?

私が「コロナ下における企業支援」というテーマで、

社内研修で講師を務めたことがあるのですが、

「お客さんにビジネスモデル転換させるには、どのようなアドバイスすればよいのか?」

という、行員から直球の質問を受けたことがあります。

アフターコロナのビジネスモデル転換、

言葉ではきれいに聞こえますが、なかなか難しい、

じゃあ、どうするのか?

無責任なようですが、答えはわかりません。

企業それぞれのことですから、企業が社長を中心に真剣に考え、

試行錯誤しながら、答えを見つけ出していくしかありません。

私もしょせん銀行員、飛躍したアイデアなど出ようはずもありません。

ただし、われわれ地域金融機関の職員の使命は、

こういう社長さんの悩みを、一緒になって真剣に考えてやること、

これが伴奏支援といえるものなのではないでしょうか。

しかし、よく考えてみると、

ニューノーマルで登場したビジネスというものは、

実はコロナ前から作られていたモデルが多いのではないか?と思うのです。

キャッシュレス決済、無人店舗、デリバリー、WEB会議、

これらは従前から存在したもので、たまたまコロナ禍によって、一気に広まったものです。

そもそも、宴会にしても旅行にしても、

歓送迎会やら、飲みニケーション、団体旅行などはもとより減少傾向にありました。

首都圏一極集中から地方へ、ブランドから個性へ、プライベート優先など、

コロナ前から、ものの見方・考え方、価値観は変化してきていましたよね。

コロナによってニューノーマルが始まった、ではないでしょう

コロナを境に「変化が加速」しただけではないでしょうか。

人口の減少(消費減少・労働力不足)、産業のIT化がますます進み、

我々の生活スタイル、そして消費行動、企業活動は大きく変化してきたのです、

つまり、コロナ禍によらずとも「ニューノーマル」はもたらされているということです。

中小企業といえども、こうした変化(消費行動、企業活動)を読み取って、

自社の戦略シナリオを描いていく、これしかありません。

環境変化に対して、自社を変革し続けていく、

そうしなければ、生き残りはできない

ということではないでしょうか。

新しい価値観とは

少し前に「パーパス経営」に関する図書をいくつか読みました。

いわゆる「Z世代」といわれる若者たちは、

給与や出世などよりも、「誰かの役に立つ」、とか、「自分の価値観にあった」

仕事を選ぶ、優先する、というのです(ホントかな?)。

でも、たしかに消費者のなかにも、

少し割高でも、環境に配慮した商品を、あえて選択する人もいます。

何に対してお金を使うのか、価値観、優先順位が変化してきているようです。

アフターコロナの世界では、さらにこの変化は加速するのではないでしょうか。

商品を選ぶ際には、経済面だけでなく、環境面、衛生面、自分の価値にあうかどうか、

共感、信頼

中小企業といえども、こういうことを無視している企業では、

成長・発展は難しいのではないでしょうか。

当然に、われわれ地方銀行も、肝に銘じて、取り組まなければいけませんね。

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