こんにちは、#ひろとし課長#です。某地方銀行で営業店管理職をやってます、現職です。私は長年、事業再生のセクションに従事し、1年ほど前まで責任者をやっておりました。これらの経験を、2022年より、「事業再生」をテーマにブログにて紹介しています。
最近、アップする件数も激減してしまい、「我ながら何やってるのか」、と反省しています。当初の志は如何、忙しいというよりも、健康面(体調不良が多くて・・・)のせいで、気力とマインドが落ちている、というのが今の私の実態であります。
そうはいいましても、私のこれまでの銀行員生活で経験したこと、特に地方銀行の本業ともいえる「事業再生」に関しては、なるべく知見を後世に委ねたい、この思いは変わりません。というわで、気を取り直して、ひさびさに筆を取ることを思い立ちました。今後も定期的に、心が許す限りにおいて、気の向くまま筆を取る覚悟でおりますので、どうかお付き合いください。
近況
コロナ融資の返済が本格化、を迎える7月となりました。はやいですね。2020年のGW前後から夏にかけて、ホント日本はどうなるのだろうという不安感、自身や家族の感染の恐怖を感じながら、取引先企業支援のため、BKとしての「はやめはやめ」の対応をとるべく、いろいろ考え、示達を発刊し、各営業店や再生支援先企業を訪問していたころが、ホントに最近のように思い出されます。
新型コロナが5類に分類されて以降、人の移動や消費も回復、中国人観光客はまだまだの様子ですが、私の住んでいる地方都市でもインバウンド客が行き来するなど、コロナ前に迫る活況を呈しているようです。取引先企業においても、そりゃあ個別要因はさまざまでしょうが、総じて好調である企業が多いように感じます。ここだけの話ですと、国内の中小企業はコロナ禍を脱して、順調に回復に向かっている、ように見えます。
しかし最近、私のところに回ってくる、信用保証協会融資の代位弁済という話が、ぽつぽつ増えてきております。今回まわってきた対象先は個人事業主で飲食業。コロナ融資以外に融資取引はありません。
この取引先は、駅前の居酒屋だよね。
当行の取引はコロナ融資しかない?
それって、コロナ融資を純新規先として対応したの?
コロナ融資の推進先として対応したかと思います。
この先以外も多数あります。
コロナ融資は実態は赤字資金である。
赤字資金はメインバンクが対応すべき資金。融資後もしっかり業況を把握して、返済ができるように指導するのがメインバンクの責任である。保証協会付きだから対応するなんて軽い考えではだめだと、当社のコロナ融資の対応方針として掲げたはず。
コロナ融資を対応した先で、最近時に面談していない先はないだろうな。
もしそういう先があったら、すみやかに経営者と面談し、近況を確認すること。
かしこまりました。
上記の会話は、最近時の私とその部下の実際の会話です。やはり飲食業は相当に厳しい様子。確定申告書の売上高よりもコロナ融資の借入額の方が大きく、今後どうやって返済していくのだろうか?と思い悩みます。飲食業は、みなさんどういう印象をお持ちなのかわかりませんが、飲食業は、いわゆる「はやりすたり」が激しく、ビジネスモデル的に短命で、銀行側からすると、「リスク業界」とみなしています。参入障壁も低く、開業しやすい。オープン時は話題性もあり、一時的な賑わいもあるのでしょうが、これが長続きするとは限りません。飲食業(特に居酒屋系)はコロナで最も大きな影響を受けた業種であるが、コロナ以前から生き残りが厳しい業種でした。この経営者(まだ40代でした)は今後どうするのでしょうか?子供も小さく、どうやって養っていくのか心配です。数字だけ拝見しても、失礼ながら再生するには並大抵のことではムリのような気がしました。
いざ代弁を行うにあたって、このケースでは、コロナ融資はそもそも対応すべきではなかったか、といわれるとなんとも言えません。コロナ蔓延時の2020年は、中小企業救済を合言葉に、「とにかくすみやかに融資対応をすること」として、稟議申請、貸出に明け暮れていたと思います。金融機関の中には、言葉は悪いですが信用保証協会の優良保証付き融資なのでということで、やみくもに貸出実行を行っていたというのも事実でしょう。実際にこの時の対応がなければ、この飲食店はその時に破産していたはず。しかし、融資対応した資金は、おそらく当人の生活費に消えていったはず、当人が飲食店で再生しないかぎりは、残念ながら、この時の資金対応はムダ金だった、ということになってしまいます。
私はコロナ融資の返済開始が懸念される前から、「足元で業況が回復途上である場合、再リスケを要請すること」、金融機関は、据え置き期間が終了=約定返済開始、という画一的な判断ではなく、「取引先企業の実態にあわせ、柔軟に検討するべき」ということを主張してまいりました。取引先企業をひとつひとつ丁寧にヒアリングを実施し、必要であれば追加の金融支援を講じていく、ということをしていかなければならないのです。当社がコロナ融資先に対して、ヒアリングした内容によると、上記のように代位弁済に陥るケースもありますが、「コロナ融資は万一のために調達したが、余剰資金なので一括返済する」、という企業が少なくありませんでした。またこのままの約定で返済をしていく、という企業をあわせると、大多数の企業が返済は問題ない、としているようです。世間でいうコロナ返済開始後は倒産が増えるのでは・・・と騒ぎ立てるのは、金融機関が取引先の実態を把握していない、いわゆる「貸っぱなし」の状態にあるので、よくわからないから不安、ということだと思います。取引先企業の実態を把握することなく、コロナ融資の返済開始→返済負担増加→資金繰り破綻、につながるのではないかと心配しているくらいならば、上記の私と部下との会話のように、取引先企業一社一社訪問して確認したらいいのに。
もはやコロナではない
そうはいいましても、返済に窮している企業も少なくないのは事実です。従前から申し上げているように、コロナ前から事業再生に取り組んでいる企業については、コロナによる資金調達により、債務超過拡大、多重債務に陥ってしまっています。こういう取引先に対しては、これまで以上に、金融機関が協調して支援をしていかなければなりません。
ところが最近は、「もじはやコロナではない」という合言葉に、政府系金融機関の貸出スタンスが厳しめになっている、という情報を聞きました(前回のブログでもコメント済です)。コロナ蔓延期間中は、とにもかくにも中小企業の延命措置のため、貸出を実行すること、というスタンスが、その後コロナ特例融資の延長、延長を繰り返し、5類に分類された途端、「もはやコロナではない」といって「貸しはがし」はしないものの、「約定回収ありき」の回収方針では中小零細企業としてはたまったものではありません。なんでそう極端なのでしょうかね?なんでも一律でこうしなきゃいけない、なんてことはありえず、取引先企業ごとに柔軟に対応していく、でいいと思うんですが。
S公庫さん、本部の方針が変わったようです。
S金庫さん、完全民営化によって、どのようなスタンスをとるのでしょうか、いいほうに振れてほしいけど。
地方金融機関として
とりとめもない話をつらつらと書きましたが、地方金融機関として、コロナ融資の返済開始がピークを迎えるにあたって、対応した企業ごと足元の業況等を把握し、個別に対応方針を検討していく。資金繰りに窮する企業には、追加の金融支援を検討する、また本業再生のために伴走支援を行う。こういうスタンスで地道に取り組んで行くことだと思います。「もはやコロナではない」からといって、ドライに割り切って、スタンスを厳しくするのでは取引先企業の再生はできません。コロナ感染拡大は終了しても、コロナの後遺症は長い間続くでしょうから。
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