" /> 現役地方銀行員「課長」が、中小企業支援のため、「副業ブログ」はじめました!【7日目】 - 地方銀行員が語る「中小企業再生支援」の現場

現役地方銀行員「課長」が、中小企業支援のため、「副業ブログ」はじめました!【7日目】

事業再生

こんにちは#ひろとし課長#です。

私は某地方銀行の中小企業の事業再生セクションに、約10年間従事し、

最近まで責任者を務めておりました。

現在、中小企業の事業再生分野に携わっている方、また、中小企業の経営者の方などに、

私のこれまでの経験ノウハウなんぞをお伝え出来たらと考えています。

さて前回の続きですが、金融庁の金融行政方針として、

「金融仲介機能の発揮」「持続可能なビジネスモデルの構築」

そして、「共通価値の創造」を強調している。

が、そんなこと当たり前じゃん、って思っていたのに・・・の続きです。

金融庁の主張は以下の通りです。

銀行(地方銀行)は、

  • 「十分な担保・保証があるか」「高い信用力があるか」等の企業の財務指標を中心とした定型的融資基準により、与信判断、融資実行をしている。
  • こうした基準に適う一部の企業に対して融資拡大の過当競争が行われている。

つまり、

  • 「信用力のない企業」には、「担保・保証(保証協会含む)」がつかないと融資できない。

と言っているのです。

たしかに、そりゃそうだろうと思うところがありましたが、

そうは言っても・・・て思っていました。この言葉を聞くまでは

「金融排除」

金融排除とは?

「金融排除」って何?

たぶん、今の銀行員でも、この言葉を答えられるのは、ごく少数なのかもしれません。

「日本型金融排除」とは

「十分な担保・保証のある企業」や「高い信用力のある先」以外に対する金融機関の取組みが十分でないために、企業価値の向上が実現できず、金融機関自身もビジネスチャンスを逃している状況

2016年金融行政方針の要約(ネット検索)

私の地方には、信用力が高い企業がそもそも多くなく、かつ現在は、信用保証協会への過度な依存など、

そんなはずはない、と思っていました。

しかし、本部で担当していた中小企業の再生支援の事例を紹介します。

事例1(金融排除の事例)

その取引先(仮にS社とします)は、PLはずっと黒字なのですが在庫に不明点があり、かつ、代取が資金繰りや経営面での説明が不得手であり、黒字にもかかわらず、資金不足が生じることを、メインバンクである当行に説明することができませんでした。ある時、S社社長が全く知らないコンサルタントを連れて、当行支店を訪ねてきました。用件は、計画を作るから「リスケ」をしてほしい、というのです。

当初わたしは当社に関与していませんでした(本部でのS社担当でもなかったです)。これは聞いた話なのですが、コンサルが提出する計画に対し、当時の営業店支店長と担当(両方とあまり精通していない)は、いろいろツッコミを入れて、なかなか応諾しなかったようです。それを何度か繰り返した結果、ついに、S社社長がキレて、なんと金融庁にタレコミしたのです。

「〇〇銀行がリスケを応諾してくれない」

金融庁さん(地方の財務事務所ですが)に呼び出された私は、営業店から聴取した経緯、状況を説明。S社社長の主張に対して、金融庁さんは、「よく話を聞いてやってほしい」ということでした。それ以降、私が本部担当となり、直接S社社長ならび、そのコンサルと話を聞くこととなりました。

私が初めて面談した際には、コンサル側の主張する、「支店に対する不平不満」をまず聞き、私もコンサルから提出されている計画の修正すべき点を指摘しました。その時同席していた社長からは、一言も発言はありませんでした。

私もこの社長は、話ができない人なんだ、という「噂」を信じました。

その後、私は社長に問題となっている在庫を見せてもらうようお願いしました。その当日、代取は当社の車を用意して、私に在庫を隠すどころか、全部説明して回ってくれたのです。

あの話をしない社長が、別人のように流暢に説明してくれます。社長から言われて、ハッとしたのは、

「銀行さんに在庫を見せてくれって言われたの初めてだ。」

私は在庫を確認しました。なぜ在庫過多になっているの、在庫の状態、今後どう売りさばくのか、それに対し、社長は的確に答えるではありませんか。

黒字なのに資金繰りが厳しい理由

確かに在庫が長期化していたのですが、架空や粉飾ではなく、実は、大手企業の依頼を受けて生産したものが、ドタキャンされたとのこと。中小・零細でよくあることです。その在庫負担の資金が厳しかったということ(在庫資金を長期借入金で調達するから約定返済負担が重くなる)。         それを社長がうまく説明できない、しかしも営業店の行員も理解しようとしない(勉強不足もあり)から、保全に頼る、保証協会付き融資のみしか対応しない。そして、保証協会の保証枠がいっぱいだから当行は謝絶する。当行が融資してくれないから、他行に融資をお願いする。他行も融資対応できなくなって、ついにリスケ要請する事態になったのです。その時は、メガバンクから信用組合まで含めて複数の金融機関取引となっていました(ノンバンクがなくてよかった)。

その後、当行が主導し計画を修正。バンクミーティングを開催し、全行リスケ対応することができました。

S社のその後ですが、もとより環境が追い風の業種であったこともあり、その後も黒字を継続。問題の在庫も引き取り先が現れ、業績はまさにV字回復しました。リスケしていた債権も正常化するどころか、複数あった金融機関をまとめるべく、当行がいくつかの金融機関の肩代わりまで行いました。

この話は、当行の成功事例などではなく、

まさに「金融排除」が行われていたケースではないか。

確かに「信用力は低い」ものの融資対応がまったくできない先ではない。社長の話がよくわからないから、といって銀行側がS社を理解しようともしない。在庫過剰を指摘しながら、在庫の確認も、理由も聞かない。たまたま業況がV字回復したものの、あの時、S社の社長が金融庁にタレこまなかったら、どうなっていただろうか?

私は行員向けの研修でもこの話をよくしました。

実はみなさんの現場でも気が付かないだけで、「金融排除」が日常で行われているのではないでしょうかと。

長くなりましたので、次回に続きとします。

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