こんにちは#ひろとし課長#です
私は某地方銀行の中小企業の事業再生セクションに、約10年間従事し、
最近まで責任者を務めておりました。
現在、中小企業の事業再生分野に携わっている方、また、中小企業の経営者の方などに、
私のこれまでの経験とノウハウなんぞをお伝え出来たらと考えています。
前回に引き続き、私が衝撃を受けた
金融排除について話を進めていきます。
ある時、私が懇意にしているあるコンサルの担当から、
「#ひろとし#課長 『捨てられる銀行』って読みました?」
と言われ、「まだ読んでないです。」と答えました。
「捨てられる銀行」著者 橋本卓典 講談社現代新書
については、存在は知っており、いつか読もう読もうって思っていたのですが。
その時は、頭の中での、いつか読もうリストのひとつくらいで。
その後、そのコンサル担当者と酒宴の席を設けることもあって、
また同じ質問を受けることも「シャク」なので、アマゾンで購入し、読みました。
私は、正直この書籍の内容に、ハマりました。
具体的な感想は、ホントに長くなるので避けますが(また書評という形でアップします)、
行員向け研修にも紹介したこともあります。
私が、「金融排除」という言葉を強く認識したのは、
金融行政方針の中での「フレーズ」というより、
橋本卓典氏の書籍 金融排除 幻冬舎新書
を読んでからの衝撃が強かったのです。
金融排除 その2
信用保証協会の保証が得られなかったことで、金融機関から融資を断られたことがある。
自分のところでプロパー融資することなどみじんも検討していない。
これもある意味の排除である公算が大きい。
なぜならば、少しのプロパー融資も検討しないということは、借り手が返済困難に陥ったら、ただちに保証協会に代位弁済させて、立ち去ることを前提とした取引だった疑いが否定できない。
自分だけが都合の良い条件で貸し出し、経営改善に何ら手を貸すこともなく、状況が悪くなれば保証協会に代弁させて逃げ出す。さらに、その結果、保証協会も回収できなかった分は国民負担にツケをまわす金融とはいったい何なのか。
「貸し渋り解消」に名を借りた、無責任以外の何物でもない。
金融排除 幻冬舎新書 著者 橋本卓典
確かに、銀行は無責任なことをしている。そんな実感あります。
企業の決算毎に銀行では「格付」という作業を行います。
つまり、企業の決算内容によって、「正常先」「要注意先」「破綻懸念先」等に区分します。
信用力のある企業というのは、「正常先」の中でも、いくつかのランクがあって、
その上位の先のことを指します。
通常、銀行はその「正常先」の中でも上位先に対し、足しげく通い、様々な提案を行うのです。
よくいう不良債権というのは、「要注意先」以下のランク先をいいますが、
「要注意先」までは、ミドルリスク層といい、融資対応は可能なのです。
しかし、問題は「破綻懸念先」以下に区分された企業で、通常銀行は融資対応は行いません。
「破綻懸念先」とは、銀行会計上は「デフォルト=倒産・債務不履行」したことになっており、
当たり前ですが、倒産先に融資対応などできないのです。
それでは、破綻懸念先に区分された企業の末路はどうなっていくのでしょうか?
金融排除 その3「破綻懸念先」
「破綻懸念先」は、銀行会計上「デフォルト」先なので、新規融資は行えません。
しかし、実際には事業を継続しているので、銀行もリスケには応じることができます。
場合によっては、商業手形割引くらいは行えます(銀行にもよりますが)。
当然、営業店の行員も、信用力の高い企業を優先的に、訪問しますので、
「破綻懸念先」に区分された企業には、リスケ期限ごとの半年、
もしくは決算書をいただきにあがる、そのくらいしか訪問する機会なくなってしまいます。
当然、その先には、営業店のエース級行員どころか、支店長も訪問することも少ないでしょう。
それが、本当に明日をも知れぬ資金繰りの先ならば、やむをえませんが。
私が、本部において、営業店の「格付申請」を見ていた時、気づいたことがあります。
仮にB社とします。
B社は、過去の決算の影響か、大幅に債務超過状態にありました。今回の営業店からの申請も「破綻懸念先」。しかし、過去数年、少なくとも3年はPLは黒字で、CFもプラスを維持しています。当行融資は、保証協会付き融資のみで、半年ごとにリスケ対応するのみでした。
私は、営業店の担当(若手行員)に、なんでB社は、「破綻懸念先」なの?と問うたところ、シドロモドロな口調で、従前から「破綻懸念先」でしたから。と。
たしかに、まだまだ大幅な債務超過だけれども、CFはプラス確保しているし、債務償還力もある。その企業が、従前「破綻懸念先」だという理由だけで、また今年度も「破綻懸念先」なのか?
メインである当行が、「破綻懸念先」とし、保証協会付き融資をリスケのみ行うということは、B社はおそらく他行からも資金調達ができないであろう。
本当に、営業店はB社の実態が分かっているのか?
営業店は格付付与という事務に忙殺されます。
そんなに難しくない先は、前例踏襲に従って、流してしまいたくなる時もあるでしょう。
しかし、地域メイン行である当行が、このような事務的に債務者区分をおこなっていたら、
取引先の企業はたまったものではない。
これは、銀行都合の事務効率化の一環で、顧客の内容も理解せず、債務区分判定を行うなど、
「金融排除」にほかならない。
中小・零細企業にとって、メイン行の金融支援は命綱である。
B社のような事例は、気が付かないだけで他にもあるはず。
みなさんの事務的な対応が、地域企業を窮地に追い込むのだ。
私は、行員向け研修で、すべて見直すよう、大いに主張しました。
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