こんにちは。あらためまして#ひろとし課長#です。
私は某地方銀行の中小企業の事業再生セクションに、約10年間従事し、
最近まで責任者を務めておりました。
現在、中小企業の事業再生分野に携わっている方、また、中小企業の経営者の方などに、
私のこれまでの経験・ノウハウなんぞをお伝え出来たら、と思っています。
そろそろ、本気モードを出していきます。
企業の異常発見?
これまで普通に融資対応してきた取引先企業の異変や異常は、
どういう形で発見するのでしょうか?
銀行のもっている取引先企業の財務データというものは、
毎月試算表や資金繰り表をいただいていない限り、
前期の決算のデータが最新なものになるはずです。
もしその企業さんの財務情報は、毎期の決算報告のみという場合ですと、
決算書が完成するまでには、決算月を終えてから2か月以内ですので、
最新の財務データをいただくのは、直近決算から2か月後ということになります。
そうすると、企業の財務情報は最新でも2か月前のものということになるのです。
銀行は過去の財務情報を中心に、その企業のよし悪しを判断する、ことが一般的であります。
前期決算が好調であっても、これ以降、企業の状況はどのようになっているのか?
定期的に資金繰り表や試算表を提出いただけて、
社長や経理の方とコミュニケーションとれているならばよいですが、
中小零細企業の社長は、足元の数値状況を把握できていないケースが多分にあります。
前期決算は黒字である、
しかし、割引の依頼が増える、急な借入申し込みがある、などのこれまでにない行動が起きた場合、
また、政府系金融機関から入金がある、
預金の平均残高が落ち込む、定期預金の解約の申し出、などなど、
あれ、いつもとおかしいな?
という異常、異変が起きてくるわけです。
業績悪化等は資金繰りにダイレクトに影響するわけですから、
企業は、当然に資金繰りの補填策に動き出すのです。
たとえ、決算書以外の数値データがもらえない先であっても、
銀行員は、この異変、異常は見逃してはいけません。
まず、資金繰りを確認する
上記のような異常を察したら、銀行はどういうアクションをとればいいのでしょう?
社長や経理担当に話を聞くことは当然ですが、
まず、資金繰り状況を確認する、これは絶対です。
資金繰り状況の確認のためには、社長から言質を取るだけでは不十分。
銀行に悪く思わせたくないため、たぶん大丈夫ですが、なんて言うに決まってます。
必ず、資金繰り表を提出させてください。
なかには、資金繰り表がつくったことがありません、なんて言う経営者も以外と多いです。
そうした場合は、銀行員が会社に入り込んで、一緒に作ってやる必要があります。
「いや、会社には資金繰り表を作るように言っているのですが、でてきません。」
では、だめです。銀行が乗り出していって、作成にあたる必要があるのです。
その企業が資金繰り破綻してからでは、どうにもなりません。
また、銀行員が資金繰り表の作り方を知らない、という人間も多いような気がします。
これを機会に勉強しましょう。そんなに難しくはありません。
異常を感じたら、必ず資金繰りを確認する。
これが絶対です。
いつまでもつの?
資金繰りを確認するなかで、なにが重要か?
資金繰りがいつまでもつのか?
あたりまえですけど、これが一番重要なのです。
なぜならば、1年間もちます、半年もちます、というケースと、
今月末に資金ショート確実です というケースでは、
銀行は取るべき行動が異なります。
その企業を救うのか、救わないのか?といった、方針決定が異なってくるからです。
どうしてその企業の資金繰りが厳しいのか?
実態把握するのには、時間がかかります。
増加運転資金が発生している、といった前向きな運転資金需要であるならば、よいかもしれませんが、
赤字発生、在庫増加、などのケースでは、
企業の業績改善が可能かどうか、改善するにはどのくらいの期間が必要か?
など実態把握が必要で、わかるには相応の時間がかかるのです。
通常、再生企業のDD(デューデリジェンス)には3か月程度の期間をみているので、
突発的な借入申し込みが来た場合、その再生可能性を検証が乏しいなかで、
融資対応の判断をしなければならないです。
対応方針を決める
当然に赤字資金の場合は、担保が必要ということになります。
中小零細企業の場合、前にも話しました保証協会に打診するケースが多いでしょう。
しかし、これまでも業況が厳しかった企業は、保証協会の枠も限られ、
担保提供できる不動産など残っていないケースが多いです。
それでもその企業を救うのか?救わないのか?
救うとしたら、金融支援策は、リスケかニューマネー対応か?
ニューマネーはいくらまで対応できるか?
保全不足はどこまで許容するか?
他行協調融資は可能か、否か?
足元の資金繰り状況によっては、できることとできないこと、
やるべきこと、やらなくてはならないこと、などが決まってくるのです。
当然、時間がないなかで判断を迫られるので、
救わない、回収方針とする
という厳しい選択も取らざるを得ない状況もあります。
いずれにしても、資金繰り状況が確認できないかぎり、動きようがありません。
銀行と取引先企業双方にとって、
資金繰りが日々確認できるコミュニケーションづくりが重要なのです。
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