こんにちは、あらためまして現役地方銀行管理職の#ひろとし課長#です。
私は某地方銀行の中小企業の事業再生セクションに、約10年間従事し、
最近まで責任者を務めておりました。現在は営業店で管理職を務めております。
現在、中小企業の事業再生分野に携わっている方、また、中小企業の経営者の方などに、
私のこれまでの経験・ノウハウなんぞをお伝え出来たら、と思っています。
目線があわない
さて、前回は事業再生に取り組む際は、
営業店の支店長は、社長に覚悟を決めさせる
「目線合わせ」
という儀式が、非常に重要と説きました。
私が営業店に聞いてみると、
「あの社長とは目線があわない」
とか、
「あの社長はあんまり真剣に考えていないよ」
「当行のいうことなんか聞かないよ」
という回答が返ってくるケースがあります。
事業再生のステージにおいて、
メイン銀行と再生企業との目線が合わないほど、悲劇はありません。
だって、中小企業が再生する絶対条件は、メイン行の支援ありき、ですもの。
目線があわない理由
なぜそんなことが起きていまうのでしょうか?
事業再生は、銀行員と企業の社長との信頼関係、
人間と人間のぶつかりあいだと言いました。
私の経験から、営業店の行員が、「あの社長とは目線があいません」という理由は、
以下にあるものと理解しております。
- 営業店行員がそもそも目線合わせをしていない(支店長が踏み込まない)
- 社長が重要性を理解していない(なんとかなると思っている)
- 社長が銀行を信用していない(つまびらかに暴露すると引かれると思っている)
このなかで、
1の「営業店行員がそもそも目線合わせをしていない」
いわゆる「覚悟を決めさせる儀式」を行っていない、が一番多い気がします。
そもそも社長と対峙して、覚悟を決めさせるのは、支店長の仕事です。
支店長が、社長に対して厳しいことを言うことができない、
だから、担当や若手行員にその役をまかせる。
入行して数年の若手行員が、その道何十年のベテラン社長に、
覚悟を決めろ、などといえるはずもありません。
営業店若手担当は、社長に対し、どう言うかというと、
「本部から計画を策定するよう指示がきてます。計画を作ってください、お願いします」
もしくは、
「計画はこちらで作ってみますので、あとで検証してみてください、すみません」
再生企業の社長とこんな会話が繰り返されていることだと認識しています。
これでは、社長の再生への取組みの覚悟など決まるはずもない。
銀行からお願いされているからしぶしぶ・・・て感じなのでしょう。
しかし普通の経営者ならば、自社の厳しい業況もわかっているはず。
なんとか、自社を立て直さなければ、ということは考えているはずです。
「あの社長はわかってない」?
真に社長を理解していないのは銀行のほうだということ。
実際、私が出向いて、社長と面談して、
目線が合わない、合わない、としていた社長の覚悟を決めさせたケースはいくつもあります。
社長、オレを信用してほしい。
正直に言ってくれれば、オレらは引かないから。
オレらと一緒に改善に取り組みましょう。
社長と目線が合わない理由は、銀行員が企業と真に向き合うことなく、
目をそらしているから、という理由が多いような気がしています。
社長がまだなんとかなると思っている?
社長が甘く考えていて、まだなんとかなると思っている。
たしかにこういう社長は存在します。
基本的に中小企業の社長は、PLが真っ赤であろうと、
当たり前ですが、資金繰りが維持できれば、まったく困らない。
資金繰りの維持が、個人預金や先代の預金といった、
会社からの金ではなく、個人の資産から拠出されようとも、
基本的には資金繰りが維持できれば、
銀行には迷惑かけないから、という考えを主張してきます。
資金繰りの維持もできていないのに、強気を続ける社長も、そこそこ多いです。
銀行がリスケしているにもかかわらず、社長から
「大丈夫ですよ」
「私も赤字を許容しているわけではありませんから」
なにを根拠に、そんな強気な発言をしてるのか、まったく理解できない人もいます。
まあ、そういう方は、自社が事業再生を取組むことについて、
一定の理解は示している様子で、全く目線があっていないわけではないですから。
しかし、まったくどこか他人事。
まだなんとかなる、と思っている社長には、
支店長から厳しく引導を渡す、ほかないと思います。
経営者が銀行を信用していない
中小企業が銀行とともに事業再生を進めていくうえでは、
すべてを包み隠さず、説明していただく必要があります。
(私たちを信じでもらいたいな)
当然長い企業経営の歴史において、
「粉飾」という不適正会計を行ったケースもあるでしょう。
それを銀行にあからさまにした場合、
取引解消を通告される
ことを恐れている経営者はたくさんいます。
私も事業再生を進めていくうえで、経営者から粉飾をカミングアウトされたケースは何度もあります。
当然、銀行として粉飾決算は許されるはずもありません。
なぜならば、その粉飾した決算数値をもとに、銀行は融資を行っている訳ですから、
「だまされた」となります。
これは背任行為にあたり、銀行取引約定書上の「期限の利益喪失」事由に該当します。
こういうケースでは、経験していない担当(若かろうが、ベテランでも、また本部担当でも)は、
「粉飾が見つかりました」
と、動揺しながら課長である私に報告してきます。
(まさに、ブログを書いてる本日もそんなことがありました。)
私は、「あ、やっぱり」
という程度に流すことができます、
というか、できるようになりました。
だって、ホントによくあることなのですもの。
ここからが勝負。
居直る社長、しらばっくれる社長も当然おりますが、
「本当に申し訳ありませんでした」、と社長が言ってきたら、もうこっちの勝ちです。
さあ、ここから本当の事業再生に取り組もうじゃありませんか、と返してやればよいのです。
それでも目線が合わないとき
これだけ、メイン行が本気モードで呼びかけても、
まったく響かない企業は確かにあります。
なぜそこまで頑ななのか?
本当に何とかなると思っているのか?
たしかによくわからない分野の社長は存在します。
でも、そういう時には、いくら地銀のミッションといえども、
市場から退場すべき企業を救う必要はないのです。
だって、どんなにローカルといえども、資本主義ですから。
地域のため、世の中のためにならない企業は、退場せざるを得ない。
すべてを救う、そんなことはできないし、やる必要はないのです。
メイン銀行は、それを見極めることも、地域経済の新陳代謝のために必要なことなのです。
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