こんにちは、あらためまして現役地方銀行管理職の#ひろとし課長#です。
私は某地方銀行の中小企業の事業再生セクションに、約10年間従事し、
最近まで責任者を務めておりました。現在は営業店で管理職を務めております。
現在、中小企業の事業再生分野に携わっている方、また、中小企業の経営者の方などに、
私のこれまでの経験・ノウハウなんぞをお伝え出来たら、と思っています。
前回の続きで、#ひろとし課長#が実際に体験した実例です。
再生企業が「粉飾」の事実を暴露した、というケース続編。
バンクミーティング開催
再生支援協議会さん(注:現在は中小企業活性化協議会)にお願いして、
K社のバンクミーティングを開催することとなりました。
ところで、バンクミーティングというものは、
複数の金融機関が集まるので、その金融機関のスタンスというか、考え方というか、
結構はっきりと出てきます。
基本的に支援協議会の主催によるバンクミーティングを行う企業は、
あらりまえですが、業績不芳企業であります。
メガバンクの場合、営業店ではなく、本部やサービサーが代行してやってくるケースもあります。
また、支援協議会関与=本部移管という金融機関もあるようです。
また会議においても、
「積極的に応援しましょう」という金融機関や、
静かに発言はなるべく控える 金融機関もあり。
基本はみな様子をうかがいながら、慎重に発言しますので、後者のほうが多いでしょう。
しかし本来、再生企業はメインバンクが引っ張らないと、ことが先に進みません。
メインバンクは、バンクミーティングにおいては、他の金融機関が賛同してくれるよう
積極的な姿勢や発言を示す必要があるのです。
これが、従前に述べたメイン行として「腹をくくる」ということ、なのです。
さて、K社と当行の立場はどうかというと、メインバンクは某メガバンクです。
その下に地銀がいて、当行は3番手くらいなのです。
あとは地元信用金庫と政府系金融機関、そして信用保証協会。
当行はサブ以下なので、K社に対して当行がここまでかかわる必要はなかったのかもですが。
まあ取引金融機関には、さまざまなメンバーがそろっていました。
本来ならばメイン行が先陣をきって、その支店長あたりが「みなで応援しましょう。」的な
メッセージを発信するのが必要なのですが、
K社の場合、当行(というより私が)、再生支援協議会のステージに引っ張ってきたので、
当行がリーダーシップを発揮せざるを得ません。
ただし、メイン行さんであるメガバンクも、この時ばかりは、
積極的ではないけど、そうはいっても、まったく否定的というわけではなく、
当行と一緒に進めていきます、というスタンスをとっていました(金は出さないけど)。
支援協議会主催のバンクミーティングの進行も、
メイン行さんと当行が協力して、という風な形で、開催されました。
最初のキックオフ的なバンクミーティングは、
趣旨の説明や自己紹介など、いわゆる「しゃんしゃん」で終わったのですが、
その後にひと騒動があったのでした。
割引はしない?
ひと騒動というのは、
バンクミーティング開催後、地元信用金庫が「手形割引」の対応はやめる、と突然言い出したのです。
K社の割引を対応していた金融機関は、メイン行、当行、信用金庫の3行。
しかしメイン行は最近時は割引の取り扱いなく、実質的には当行と、信用金庫の2行だったのです。
なぜ信用金庫が割引をしない、という方針としたかというと、
メイン行が割引をやめているから。
たしかに、それはそうだよね。
ではなぜ、メイン行が割引をやめたかというと、
ハッキリとした回答は聞き出せないものの、
一言で言うと、業績不芳だから、なのでしょう。
あと、業種柄、割引する手形銘柄も信用力が低い、だから・・・でしょう。
でも、そうだとしたら、当行の方針はどうする?
ただでさえコロナ禍、もとより業況不芳、資金繰りが厳しく、新規調達ができない中で、
ここで商業手形割引をやめたらK社はいったいどうなるの?
再生支援協議会から、「信用金庫が割引しない」、という方針に対して、意見を言ってもらいたい。
ということで、再度のバンクミーティング開催要請があり、また金融機関が集まりました。
会議では、信用金庫から、「割引をすることはできない」という方針とした経緯の説明があり、
「メイン行が割引をするべきだ」、という意見を主張しました。
そりゃあ、そうだが。
私としては、メイン行は割引は現状していない、ということを前提に
支援協議会の金融調整をお願いしたので、「そりゃあ、ムリでしょ」と思っていました。
「各行現状の支援スタンスは変えない」ということを前提で、進めていきたかったのですが、
信用金庫さんは、
今後の割引対応はできません。
メイン行さんが復活するならば、再度検討はしますが。
現時点では申し訳ありません。
メインさん割引は? の問いかけに対し、
検討はします・・・・
検討はするといっても、はじめからやらないつもりだろう。
その他金融機関にも発言を求められて、
うちは、コロナ資金も対応しているし、やるべき支援はやりつくしている。
メイン行と上位行で考えるべきだ。
私は話を聞いていて、イライラしていました。
なぜK社はこんなに金融機関に見捨てられているのだろうか?
私たちは、もとよりメイン行でもなく、地元金融機関でもなく、
完全にアウェーだよ。
田舎者がひょっこり、首都圏に紛れ込んでしまっている。
「ところで、御行は割引を継続できるのですか?」
支援協議会や他行さんから、当然質問が当行に向けられます。
難しい選択ですよね。
他行が全行後ろ向きで、割引とはいえ、新規で与信対応を行うかの判断をするのですから。
しかし、ここで当行が引いてしまうと、K社は完全に行き詰ってしまいます。
「割引は継続します。」
私ははっきり申し上げました。決裁もとっていないのですが、
そして、いままで黙って聞いていたイライラもあって、
私たちは田舎からはるばるやってきています。
そんな私たちが「アウェー」ながら、当社の支援をしようとしているのに、
みなさんは身近な金融機関さんでありながら、地元に企業に対し、
もっと近寄っていただけないのでしょうか?
全員・・・・・・・
誰も無反応でした。
嫌われる理由
その後、某地方銀行の担当者が、支援協議会から意見を求められて、
K社の在庫状態についてかつて質問したことがある。
それに対してなんら回答もなかった。
しかも、当方から実態把握要請と改善提案を行ったことがあったが、
なんら回答もしてくれなかった。
要するに、某地銀さんは、「よくわからないことがあるので教えてほしい」、
としたところ、
K社からはなんの回答もなかった、という。
これを聞いて私は、K社が嫌われる理由がわかった気がしました。
以前、K社の会長に聞いたところ、会長は銀行を訪問したことがないと言っていました。
当然、若社長が各銀行を訪問することなどありえず、
K社は、メイン行から来た経理部長にすべて任せてしまっていたということでした。
金融機関とって、なにが嫌かというと、「実態がよくわからない」ということ、です。
銀行は積極的に、企業の実態を把握し、事業性評価をするよう求められています。
しかし、銀行側が努力するだけでは、できないのです。
それは、企業側にも協力していただかないと。
企業側に対しては、銀行には積極的に情報を開示してもらいたい。
そうでないと、正確な判断ができないのです。
銀行員が理解しようとしない、という指摘もありますが、
企業側が教えようとしない、というケースも多分にあります。
銀行を信用していないのでしょうか?
それともテキトーにあしらえ、とでも思っているのでしょうか?
私は、某地銀さんの発言に対して、
某地銀さんのは発言はもっともだと思う。
自社の内容を銀行に対し、しっかりと説明する。
若社長、情報開示不足は、K社としてしっかり反省していただきたい。
わかりました。
なにも、銀行は偉そうに「すべて明確しろ」、なんていうことはしません。
これは私の持論ですが、銀行とお客さんの立場はイコールでしょ。
お互い様でないと、いけない。
当然、銀行は金を貸し出す立場だから、ポジションは上みたいになるけど、
決してそうではない。特に地方銀行においては。
だから、金融庁のいう、「共通価値の創造」、なのではないでしょうか。
またちょっと脱線したので、次回に続きます。
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