" /> 現役地方銀行員「課長」が、中小企業支援のため、「副業ブログ」はじめました!【17日目】 - 地方銀行員が語る「中小企業再生支援」の現場

現役地方銀行員「課長」が、中小企業支援のため、「副業ブログ」はじめました!【17日目】

事業再生

こんにちは、あらためまして現役地方銀行管理職の#ひろとし課長#です。

私は某地方銀行の中小企業の事業再生セクションに、約10年間従事し、

最近まで責任者を務めておりました。現在は営業店で管理職を務めております。

現在、中小企業の事業再生分野に携わっている方、また、中小企業の経営者の方などに、

私のこれまでの経験・ノウハウなんぞをお伝え出来たら、と思っています。

前回、前々回の続きで、#ひろとし課長#が実際に体験した実例です。

再生企業が「粉飾」の事実を暴露した、というケース最終編

バンクミーティングその後

キックオフミーティング後のゴタゴタありましたが、

結局、メイン行は検討?した結果、商手はやらないということに。

自然に、信用金庫さんも割引はしない、という方針に。

割引は当行だけという結果に。

それでいいのか?という意見も、当然ありましたが、

#ひろとし課長
#ひろとし課長

そうはいっても、当行がここで見捨てるわけにもいかないので。

できるところまでやってみるか・・・という方針にしました。

当行だけ割引を継続するため、手形の信用調査を厳しく行い、

割引のできる手形と割引しない手形を選別しました。

しかし、もとより、食品関連の老舗卸であり、

取引先の信用力は総じて低く、

大丈夫かな?って心配するほどでした。

結局、計画の策定までは、商業手形割引は当行のみ継続対応。

そのほかは返済については、一律元金据え置き対応となりました。

ほんとに資金繰りは毎月ギリギリの状況です。

支援協議会の専門家

再生支援協議会のスキームで、計画策定する場合には、

通常、再生支援協議会から外部専門家(コンサル)が紹介されます。

このコンサルは、支援協議会に登録されている、いわゆる御用達で、

企業側は、コンサル料に対し補助金をいただけることがあります。

しかし、コンサルといっても、費用が高いだけで使えない人も結構多く、

再生支援協議会側も、銀行側も、「勝手知ったる先」をチョイスすることが多いです。

さて、今回の場合も、当行からリクエストしたいコンサルファームもいたのですが、

支援協議会の推薦で、私共のまったく知らない、コンサル(しかも個人)がつけられました。

コンサル

そのコンサルは、なんとなく神経質っぽくみえるのですが、

確かに神経質ではありますが、クラインアント企業(つまりK社のこと)の面倒見はよく、

付き合いにくそうだけど、しっかりやりそうだ、という印象でした。

このコンサルに、

#ひろとし課長
#ひろとし課長

〇〇月くらいまで、デユーデリ資料と再生の方向性を教えてください。

と、お願いしてしていました。

おそらく、課題としている在庫の実態が明らかになるんだろう・・・

と、思っていました。

しかし、その後、当社との個別会議において、

たまたま、私が参加できていないときに、

この若社長が、とんでもないことを言い出したのです。

カミングアウト

「#ひろとし課長#最悪です。」

当行の、K社の担当が、青い顔して、私に、

「粉飾です、粉飾がみつかりました。」

私は、

#ひろとし課長
#ひろとし課長

それって、デユーデリの結果から見つかったの?

それとも・・・・

銀行の融資業務を長年やっていますと、

粉飾

よくあります。

事業再生の場合は、いわゆる専門家によるデユーデリの結果、

決算帳簿と実態バランスシートが異なることが往々にしてあるのです。

そこで、バンクミーティングにおいて明らかにされ、

会議が紛糾する、ということもしばしば。

バンクミーティング

さて、K社の場合は、

この若社長が、当行とのモニタリング会議の後半に、お伝えしたいことがある、として

「当社は長年にわたって、在庫の架空計上をしていました。」

と、暴露したそうです。

(そうです、というのは、たまたまこの会議で、私は参加できなかったので)

「申し訳ありませんでした。」

驚いたのはその額なのですが、

帳簿在庫の6割が実在しないものだったそうです。

さすがに、それって・・・と思いました。

確かに、初めて在庫確認に行ったとき、

若社長
若社長

回転期間は2か月程度

と、若社長が目をキラキラさせて、即答しましたが、

確かに、計算すると、実在する在庫の回転期間からすると、そのぐらいか、とわかります。

当行の担当は、

「当行も、割引はもうできません」と伝えたそうです。

私は、報告を受けてから少し考えて、

#ひろとし課長
#ひろとし課長

デユーデリ最中に粉飾がわかることは、再生のステージにおいてよくあること。

それにしても、当社がなぜ粉飾したのか。

なぜ今回、若社長が我々に告げたのか、それを調べてから判断しよう。

と、自分でも意外と冷静に、スラっと、部下に指示できました。

巨額な粉飾額、にもかかわらず。

直接カミングアウトされたわけでもなかったから?

まあ、よくあることだから、というのもあるのですが、

専門家からの報告ではなく、あの若社長が自白した、ということに興味をもちました。

しかも、当行だけに

当然、専門家がデユーデリを始めると、在庫の実態調査に必ず入ります、

そうすると、粉飾はだいたいわかります。

だから、再生企業は、コンサルが入ることを拒むのです。

当社もそうでした。

私が最初に当社に訪れて、再生支援協議会の関与を指導したにもかかわらず、

それをやらなかったのは、実は在庫粉飾があったからなのです。

私がK社の件で、最初に再生支援協議会を訪問した際、

協議会の担当者から、「K社は、以前相談歴があります。

でも、その時は(当時会長が社長)、当社側から辞退しました。」

という情報は得ていました。

その時は、老舗というプライドが躊躇しているのか?と思いましたが、

今になれば、粉飾の事実を金融機関に明らかにされることで、拒んだのでしょう。

しかし、今回ばかりはコロナという外部環境もあり、

さすがにもはやごまかしきれない、と判断したのか。

しかも、若社長が当行に、カミングアウトしたのです。

若社長の覚悟

その後、若社長と面談した私は、

#ひろとし課長
#ひろとし課長

粉飾の理由は?

若社長
若社長

金融機関に対して赤字を見せる訳にはいかないからだと。

毎期少しずつ行っていました。

#ひろとし課長
#ひろとし課長

誰の指示ではじめたのか?

粉飾の事実を知っているのは誰か?

若社長
若社長

会長と私と経理部長の3人です。

会長が社長時代に粉飾を行いました。

私もある時から、事実を知らされておりました。

私はてっきり、メイン行から出向してきた経理部長

がすべてを仕組んでいたと思ったのですが、どうやら違うようでした。

#ひろとし課長
#ひろとし課長

なぜこの期に及んで話をしたのか?

若社長
若社長

当社が再生するためには、金融機関の協力が必要だと思います。

そのためには、すべて事実を明らかにすることが必要だと思いました。

なんとか、支援の継続をお願いします。

これは、若社長、自分の言葉で話している。

事業再生というのは、人間と人間のぶつかり合い、こうならないと、いけない。

#ひろとし課長
#ひろとし課長

若社長、過去のことをいまさら言っても仕方がない。

ただし、今後2度と行ないことを誓ってほしい。

当行はわかったが、他行はどのように反応するかわからない。

しかし、我々も事実を知った以上、黙っている訳にはいかない。

再生支援協議会に事情を話し、緊急でバンクミーティングを開催して、

金融機関にまず謝罪するべきだ。

粉飾の事実はゆるされないものの、あくまで過去のことです。

再生に取り組むにあたっては、すべての膿を全部出しきってから。

#ひろとし課長
#ひろとし課長

ほかに隠し事はないね。

これ以後になってから、「実は・・・」

はもう許されないからね。

若社長、ほかにないね。

若社長
若社長

これ以上はありません。

#ひろとし課長
#ひろとし課長

よしわかった。

よくぞ、伝えてくれた。

我ながら、ちょっと甘いかな?なんて思ったりしました。

えっ、支援継続するんですか?と部下にも言われましたが、

何と言っても、暴露したら「支援打ち切り」というリスクを承知で、

若社長は、当行に事実を告げてくれた訳です。しかも、若社長が悪いわけではない。

当然、会長も同席して、私たちには平謝りでした。

会長は、2代目経営者で、いい時代にK社を引き継いだため、

もしかしたら、経営の苦労が少なかったのでは?

また、業況がよかったため、メガバンクから、代々経理部長が送られてきており、

財務関係は任せすぎた、というか、メイン行に遠慮したのかもしれません。

とにかく、会長は、財務、金融にはノータッチだったのです。

しかし会長の時代に、業績は悪化しはじめました。

それを粉飾という形で隠してしまったのです。

たまたま、このたび若社長に代替わりをしたところ、コロナも含め、緊急事態となりました。

若社長は、これでも、外部で仕事をした経験もあったようで、これではまずいと感じたんでしょう。

もし、私との面談によって、「これではいけない」という、考えをもってくれたとしたら、

私としては、本望です。

私は、若社長の誠実な姿勢を認め、支援を継続しようと思ったのでした。

その後

バンクミーティングにおいて、若社長が金融機関の前で謝罪。

若社長
若社長

誠に申し訳ありませんでした。

会長も同時に謝罪。

経営責任として、自分たちの役員報酬の追加削減などを約束しました。

意外にも、他の金融機関もあまり驚くこともなく?淡々としている様子で、

もはや当社の再生を諦めているのか?それとも粉飾はわかっていたのかな?

質問もいくつかありましたが、紛糾することもなく、

バンクミーティングは終了。

数か月後に提出された計画については、全行同意を得ることができました。

現在も、計画を作ったコンサルが入り込み、当社の経営改善に携わっています。

当行は、毎月、会長、若社長、コンサルとモニタリング会議で経営改善の進捗状況を確認しています。

私があの若社長を初めて見た時は、

「彼で大丈夫かな?」と思いました。

当然、いまでも頼りなさはありますが、しっかり責任もって、当社の経営を行おうとしている、

「必死さ」、が本当に伝わってきます。

もし、粉飾の事実を自分の口から伝えずに、コンサルのデユーデリから明らかにされた時と、

自分で事実をカミングアウトし、我々に謝罪したことでは、まったく違った結果になったと思います。

まさに、債務者と銀行との、お互いの信頼関係。

人間と人間のぶつかり合いのドラマでした。

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