" /> 現役地方銀行員の事業再生ブログ【19日目】再生可能性を見極めるのは難しい - 地方銀行員が語る「中小企業再生支援」の現場

現役地方銀行員の事業再生ブログ【19日目】再生可能性を見極めるのは難しい

事業再生

こんにちは、あらためまして現役地方銀行管理職の#ひろとし課長#です。

私は某地方銀行の中小企業の事業再生セクションに、約10年間従事し、

最近まで責任者を務めておりました。現在は営業店で管理職を務めております。

現在、中小企業の事業再生分野に携わっている方、また、中小企業の経営者の方などに、

私のこれまでの経験・ノウハウなんぞをお伝え出来たら、と思っています。

さて前回は、いきなり経営改善計画書の作成にとりかかる前段階として、

その企業って、本当に再生するの?

を確認しなければダメといいました。

企業の経営改善に取り組むためにはまず、

窮境要因を特定する

つまり業績悪化に陥っている理由を特定することから始めなければなりません。

実は、さらにもう一つ

窮境要因が特定できたからといって、安心してはダメなのです。

(窮境要因が特定できると、なるほど、と我ながら快感を覚える訳ですが)。

その窮境要因を除去できるのか?

今回はこれを中心に語っていきます。

窮境要因の除去可能性

窮境要因が特定できたとしても、企業が再生を果たすためには、

それを克服し、乗り越えなくてはいけません。

窮境要因を特定できたら、今度はそれを取り除くことができるかどうか、

その検証が必要なのです。

たとえ、病気の原因が特定できても、

その治療薬はいまだ開発されていません、

となると、残念ながら蓋をするしかないのです。

窮境要因の除去の可能性を検討することは、非常に難しいです。

実際のところ、できるかどうかは、やってみないと分からない、というのが多いです。

不採算事業を閉ざせばよい

よく聞く話です。

大手企業であれば、コア事業、将来性のある事業、不採算事業など

複数の事業ポートフォリオを有しているため、

不採算事業をカットする、ということも考えられます。

また、業務のバリューチェーンや、川上、川下といったビジネスプロセスの中で、

価値を生んでいない部門をアウトソーシングするとか、

リストラなど、いわゆる外科的手術という手法での改善という、

シナリオを描くこともできるでしょうが、

中小・零細だと、コア、ノンコアどころか、単一事業しかないケースも多く、

そのコア事業が不採算(競争力を失っている)というケースがよくあります。

中小・零細企業の業績不振の場合には、外科的手術だけでは成し遂げられず、

本業のPLの改善を実現させなければならないのです。

金融機関に対し、盛んに「本業支援」が求めらているのはこういうことなのです。

再生可能性の見極め

企業が再生するとは、どういうことか。

単に黒字になるだけではダメです。

再生企業の黒字が、一過性ではないこと

また、特別利益や不動産売却とか、補助金など、経常外収入による黒字ではなく、

本業、営業利益段階で黒字転換すること、

しかも、継続的に、安定的に黒字、営業CFがプラスであること。

これが絶対条件だと、思います。

つまり、企業の再生の見極めとは、

  1. 本業での営業段階での黒字確保
  2. キャッシュフローのプラスが安定的に維持できる

この条件が揃うことが

できるだろうと判断された場合、といえます。

最終的に判断するためには、

外部環境の行方、その企業の取って追い風か、向かい風か、

企業の基礎体力、自己資本の厚さなど、改善取組みの期間中の資力、

企業のポテンシャル、成長要素など

あと、もっとも重要なのは、経営者の取組み意欲再生のキーマンが存在すること

せっかく再生の絵がかけたとしても、それを実行する人物、経営資源がなくてはいけません。

これらを総合的に判断して、見極めるということだと思います。

そうはいっても判断は難しい

窮境要因を特定し、除去可能性を検証し、その企業の再生可能性を見極める。

ものすごく重要で、かつ判断が難しいことです。

このハードな作業を行わずに、安易に「改善計画まがいのもの」を作っったとしても、

うまくいくはずがありません。

再生の見込みがないと判断したならば、

金融機関としては、支援を継続することなく、市場から退場をさせる、

という選択肢も取らざるを得ません。

よって、再生の可否について判断を誤ることは、

金融機関は社会的な責任として、許されないのです。

  • 救えない企業を生き残していくことはダメ
  • 救える企業を救わないのはもっとダメ

もし、窮境要因が経営者その人によるもの、と判断したら、

経営者の更迭ができなければ、その企業は再生しないことになります。

しかし、金融機関の職員も人間ですので、

「社長更迭」

などいう厳しいことは、できればいいたくありません。

ましてや、企業を市場から退場を命ずるなど、

そんな場面にできればかかわりたくないことが人情でしょう。

これでは再生ははたせない、窮境要因は除去しきれていない、

とわかっていながらも、

「まあ、なんとか今回はこれでがんばってくれ」

といった願望に近い意思決定をしながら、

「ホントに再生できるのであろうか?」

という不安を抱えている。

支援打ち切り、という判断を下すことができず、継続支援とするケースもあります。

しかし、そういうのは結果の先送りに過ぎず、やはり再生を果たすことなく、

結果的に、金融機関はロスを増やすことになってしまう。

自分の判断や覚悟次第で、中小企業を救うことがきるのか、

また銀行に多額なロスを生じさせることになるのか、

金融機関の事業再生にかかわる関係者は、

日々悩み、苦しみ、葛藤している、そんな毎日なのです。

私もそうでした。

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