現役地方銀行管理職#ひろとし課長#による、中小企業支援のための事業再生ブログ。
今回の22日目は、前回に続きまして「経営改善計画書」をつくる、ことを中心に、
自分なりの考えをお伝えしたいと思います。
今回の主題は、「ストーリーとしての経営改善計画」です。
こんにちは、#ひろとし課長#です。
某地方銀行の中小企業の事業再生セクションに、約10年間従事しました経験を活かし、
現在、中小企業の事業再生分野に携わっている方、また、中小企業の経営者の方などに、
私のこれまでの経験・ノウハウなんぞをお伝え出来たら、と思ってブログ書いてます。
計画の方向性を明確にしてみよう
営業店(支店)が再生企業の支援目的で、計画を作る、作ったケース、
私はその計画について、この計画を「ひとことで表現すると?」と質問します。
「え~っと、役員報酬を削減し、3年後の経常黒字を・・・」
など、なんとも面白みのないことを言うのがオチです。
私が質問する、「ひとことで表現」とは?
事業再生のため、企業がとるべく「戦略の方向性を表現して」、ということなのです。
すなわち、コストカットを中心とした戦略なのか?はたまた、売上増加による成長戦略なのか?
そのコストカットは、固定費の削減なのか?仕入れ価格交渉によるものなのか?
売上増加については、既存先なのか?新規開拓なのか?はたまた、新事業の進出なのか?
など、戦略の方向性についてを端的に表現すること、これが「計画の骨子」というものになり、
計画の中心的な取り組み方針となるのです。
よく見かけるものに、アクションプランをずらずらと列記し、PLとCF計画がある、
その数字を追いかけていくと、数年後から売上増加していき、CFが確保されている、
アクションプランと数字がどこでどうリンクしているのか、説明を聞かないとわからない、
といった分厚い計画書、これでは仮に内容はしっかりしていても、メッセージ性が伝わってきません。
策定した当該計画は、なにを戦略の中心としているのかを明確にし、
計画書の見出し部分に、取り組む中心的な方針として「計画の骨子」の記載があると、
この企業は何をしようとしているのか、
ということが取引金融機関にとって、わかりやすくなると思います。
再生計画そのものを「言語化」する
策定する計画は、「自社が再生する」と内外に宣言するものですから、
再生企業が今後なにを中心に取り組んでいくのか、が「言語化」されていたほうが、
「なるほど」といった、安心感、納得感、は間違いなく得られます。
なぜならば、金融機関が計画に同意するためには、現場に携わる担当だけでなく、
上位決裁者の理解を得なければなりません。
この計画は一言で言うと、「不採算事業Bの縮小による収益性改善」を柱とするものです。
と言いきれたほうが、アクションプランをずらずらと述べるよりも、
この計画には実現可能性がありそうだ、と思う訳です。
ぜひ「計画の骨子」をキレの良いフレーズで考えてみましょう。
金融機関としては、計画のパターンとして、コストカットによる黒字化の実現できる計画、
これが一番わかりやすく、納得しやすい計画だと思います。
なぜならば、コストカットは、自助努力だけで行えるから。
本当は、従業員のリストラなど、血のにじむような交渉劇などあり、
簡単なわけはないのですが、まあ、そうはいっても、自社都合だけ完結できるロジックなので、
納得しやすい話です。
しかし、事業再生先については、そもそもビジネスモデル事態が痛んでおり、
コストカットだけでは、黒字化の実現は難しく、
コストカット+α、がないかぎり黒字化の実現は難しい、というケースがほとんどです。
当然にそんな簡単なものではない、ということはよくわかります。
固定費圧縮だけでは黒字転換できず、仕入れ見直し、さらに売上増加しなければ、という
複合戦略も必要になるケースが多数です。
そんな格好のいい見出しが作れるか、という意見もあるでしょうが、
「計画の骨子」が複雑、キレのよいフレーズがでない、ということは、
再生計画がとっても難しいことを意味しているのでしょう。
ストーリーとしての事業再生計画
策定した計画書は、従業員の前や、金融機関にプレゼンしますよね。
計画の骨子もそうですが、計画の全容について、うまく説明できないケースがよくあります。
プレゼンがうまい、下手、というのもあると思いますが、
どうしてそのアクションプランがでてくるの?
どうして急に原価低減が実現できるの?
など、数値計画と自社の経営資源、アクションプラン、
これらが有機的に結びつかない内容のものがよくあります。
私は、その計画をストーリーで語れるか、を重要視しています。
計画をストーリーで語れないというものは、
ロジカルな展開となっていないから、
アクションプランありき、数値ありき、となっているから、だと思います。
計画を策定する際、その前工程にあたる、実態把握、DDの作業において、
多くの場合、SWOT分析を活用するのではないでしょうか。
当社の計画書式にもSWOT分析のフォーマットが組み込んであります。
もとよりSWOT分析は外部環境と内部の経営資源をうまく掛け合わせて、
経営戦略をロジカルに導き出すツールとしては最適なのですが、
多くの方(特に銀行員)は、SWOT分析の活用について学習や訓練した経験がないため、
機会、脅威、強み、弱み、この4つの箱に思いつくまま記述します。
そうするとどうなるかというと、ただ空欄を埋めるための記述に過ぎず、
SWOT分析から何かを導き出してはいないからなのです。
そうすると、計画の方向性やアクションプランと
SWOT分析が全くリンクしていないことが往々に起きます。
なんで、そのアクションプランが唐突に出てくるのか?
以前から「御社はこうしたほうがいいのでは?」というものがあって、
それを計画の骨子として記述する。それはSWOT分析の結果わかったものでないため、
ロジカルな展開にならない。その施策ありきの計画となっている、ということです。
SWOT分析から、経営戦略を導き出すためには、
経営環境「機会」「脅威」と自社の経営資源「強み」「弱み」を掛け合わせる作業、
いわゆる「クロスSWOT」を行うことで、ロジカルな展開が導き出せるはずです。
(SWOTの解説は今回は割愛します)
一方で、ロジカルな展開であるからといって、必ずしも有効な策となるとも限りません。
そもそも中小企業の場合、経営資源が乏しく、機会に対し、強みをクロスすることができない、
ということもあります。
この場合、外部環境と内部の経営資源を行ったり来たりして、
クロスできるものを見つけるといった作業を繰り返しながら、着地を見つけていきます。
自社の経営資源では実行するには少し努力が必要だ、くらいのものであれば、
少なくとも方向性は間違ってはいなさそうなので、やってみながら、
不足する資源は外部から補完を検討してみる、ということでもいいでしょう。
経営戦略を導き出すSWOT分析を有効活用し、ロジカルな経営戦略を導き出す。
そうすれば、策定した事業再生計画についても、ロジカルに語ることができる。
計画をストーリー性をもって、語ることができるわけです。
ストーリー性のない計画は、プレゼンを聞いても納得感、安心感を得ることができません。
実際はトライアンドエラーで
そんな簡単なわけないでしょ。そいう意見が飛んできそうです。
確かに、売上を上げることは難しい、これ以上の人員削減も難しい、
流行りのDXではないですが、「効率性の改善による」収益性の改善、といったたぐいのもの。
固定費をドラスティックに削減するものではなく、
人の動きを変える、やり方を変える、生産性改善というような抽象的な戦略。
なんとかロジカルには語ることはできそうですが、ホントに実現できるのかな、
という疑問は残ります。
実際は、作った計画が最初から最後まで、うまくいくなんてことはほとんどなく、
いくらロジカルに、ストーリーをもって語れたとしても、
現実的にはうまくいかないケースもあります(のほうが多いかも)。
その場合は、トライアンドエラーで修正していく。
そもそも当初計画がロジックの積み上げであるならば、そのロジックのどこが間違っていたのか、
環境の読みが甘かったのか?経営資源を過大評価しすぎていたのか?
あとで修正することは可能です。
ストーリーで計画が語れるのであれば、
見立てが間違っていたこと、修正することもストーリーで語ることができるはず。
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