" /> 現役地方銀行員の事業再生ブログ【23日目】リスケ計画とCFについて考える - 地方銀行員が語る「中小企業再生支援」の現場

現役地方銀行員の事業再生ブログ【23日目】リスケ計画とCFについて考える         

事業再生

現役地方銀行管理職#ひろとし課長#による、中小企業支援のための事業再生ブログ。

今回の23日目も「経営改善計画書」をつくる、ことを中心に、

自分なりの考えをお伝えしたいと思います。

今回は再生企業の再生再生計画にとって、一番重要といってもよいでしょう、

「金融機関の支援手法」のところです。

こんにちは、#ひろとし課長#です。

某地方銀行の中小企業の事業再生セクションに、約10年間従事しました経験を活かし、

現在、中小企業の事業再生分野に携わっている方、また、中小企業の経営者の方などに、

私のこれまでの経験・ノウハウなんぞをお伝え出来たら、と思ってブログ書いてます。

バンクミーティングに参加する金融機関が、提出された計画のどこを見ているかわかりますか?

企業の沿革、窮境の要因、財務DDによる実質債務超過額、記載されている内容を

1ページ目から見ている方、結構多いです。

しかし、バンクミーティング慣れした金融機関(特にメガバンクさん)は、

「今後の金融支援についてのお願い」

ここしか見てないと言っても過言ではないでしょう。

今後の金融支援のお願いって?

計画のほぼ終わりくらいのページに、「今後の金融支援のお願い」という章があります。

ここになにが記載されているかというと、

計画期間中の金融支援策について、こういうことをお願いしたのですが・・・

という内容が記載されています。

バンクミーティングに出席する金融機関としては、

「当行は何を要求されるのだろう・・・」 ここが一番心配なのです。

内容はというと、

「計画期間中は、全行一律プロラタによるリスケをお願いします。」

というのがほとんどです。

メイン行の場合、「割引は継続対応お願いします」、とか

「不動産売却しますので、担保としてるメインさんには返済に充当しますので」

とか、資金計画上のことを具体的に記載される場合もありますが、

要するに、計画期間中の金融機関へのお願い事項(ほぼリスケ内容)が記載されている訳です。

参加金融機関としては、なにが記載されているのか、一番注目するということは当たり前です。

金融支援の中には、債権放棄、サービサー売却、DDSなど、いわゆる「抜本再生」スキーム

※かなりの専門用語ですみません。

となるケースありますが、基本的に、いわゆる債権カットを伴うような金融支援策を

なんら知らされもせず、

いきなりバンクミーティングでドーン、

というのは考えにくいです、

こうした場合には、事前に弁護士などからアナウンスがあるので、そこまで心配しません。

※ちなみに、私はいきなりバンクミーティングで、

各行一律債権カットという金融支援の要請、という場面に遭遇したことがあり、

会議の質疑応答で、真っ先に「当行は否」と主張した経験はあります。

当社がメイン行であれば、そんな失礼なやり方はやりません。

要するに、金融支援のお願いの項目は、取引金融機関各行が、

今後、当社に対するリスケ、条件変更内容が記載されているのです。

返済額はあくまでCFの範囲内

事業再生計画のなかの金融支援策というのは、

簡単にいうと、

計画の施策に取り組み、業況改善してCFを確保するまで、

返済をストップしてください、あるいは、返済を緩めてください、というものです。

当然、計画に取り組んだからといっても、実績があがるまでには、ある程度の時間がかかります。

計画初年度は赤字、2年目でトントン、3年目から黒字というような計画もあるでしょう。

(というか、このくらいであれば上出来だと言えます)

この場合の金融支援策はといいますと、

1年目、2年目はCFがありませんので、

リスケ内容は、1年目、2年目は元金返済0円をお願いします。

3年目のCFを確保してから、返済を行わせるという計画が、

再生企業にとって、資金繰り上、望ましいこととなります。

なかには、1年の据え置きは容認するが、2年目からはフルアモチ(均等返済)で、

なんていうような返済を主張する金融機関、計画も見受けられます。

これでは計画に基づくリスケではなく、

ただ、1年だけはまってやるとしたもので、

企業は全く見ずに、金融機関の都合を一方的に押しつけるだけ、というものです。

返済はあくまでCFの範囲内であること

金融支援策はこうでなくてはいけません。

話しは違いますが、ゼロゼロ融資の据え置き期間が終了すると倒産が増加する、

どうしよっ、どうしよっ💦

このような意見が多いですが、

簡単です、据え置き期間を延長すればよい。

据え置き期間は、「制度融資で決まっているから」、というのではなく、

その企業のコロナからの回復、

いわゆるCFの回復度合いで決めるべきでしょう。

コロナ赤字のために資金調達したのですから、

コロナから回復しない限り、返済を再開させるべきではないのです。

1年目の赤字資金はどうする?

さて、金融支援はCF範囲内でリスケを行うとしましたが、

上記のような計画の場合、1年目の赤字については?、どうしましょう。

返済をストップさせただけでは、手元の現預金が乏しい企業ですと、

資金繰りがたたず、事業継続することができません。

「リスケするんだから、企業にそこはなんとか工面してもらう」

と考える、金融機関が多いのでしょうか?

しかし、これまで資金繰り悪化してきた企業にとって、

そのような資金の余裕があるはずもなく、

なんとか再生させるためには、ここの1年目の赤字資金を確保する必要があるのです。

金融機関としても、事業継続することができなければ、

いくら3年目から、返済は再開できるとした計画を承認しても、

企業が倒産してしまえば、融資金を回収することはできません。

この企業を生かすためにも、赤字資金を追加対応するかどうか。

メイン行を中心に、非常に厳しい審査になるでしょうが、検討は行います。

当然に、赤字資金であることから、保全策を検討する、政府系や保証協会と協調を検討する、

あるいは、他の債権に優先して返済させるというような条件面は検討することになるでしょうが。

しかし、再生企業に追加の担保や保証協会の枠空きがあるはずもなく、

他行が協調してくれることも簡単ではないでしょう。

それでも、この企業を支援する、必ず再生させる、

企業を生かしておいた方が、最大回収が図れるといった、

「経済合理性」の考えがあれば、メイン行の単独支援ということもあります。

当然に、再生計画は、メイン行が伴奏支援することで実現可能性が高いことが前提です。

ここでの決断は、私はメイン行の腕の見せ所だと思います。

メイン行としての存在価値がここでこそ問われるものと確信しています。

そんな、しびれる展開を、私は何度となく経験してきました。

そのくらいに金融機関も覚悟を決めなければ、再生支援などできないのです。

このテーマは、次回に続かせていただきます。

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