こんにちは、#ひろとし課長#です。
前回、中小企業の事業再生計画の金融支援策として、
「リスケ」なのか、あるいは「リファイナンス」なのか、
まあ、どっちでもいいでしょう、なんてことを述べたのですが、本日はその続きです。
リスケかリファイかを背景とした、泥沼の金融調整が生じた事例も紹介します。
経営改善を実現していくためには、
足元の資金繰りが安定していないといけないこと、当たり前ですよね。
社長が資金繰りに右往左往している状況では、本業に集中できるはずなどありません。
事業再生にはまず、資金繰りの安定が必須となります。
そのためには、取引金融機関が、協調して同社をなんとか支援しようという意思統一が必要です。
当然、金融機関にとっては温度差はあります。
メイン金融機関と、サブの金融機関、地元行と推進でちょっとシェアのある金融機関とでは、
考え方は異なるに決まっています。
それでも、再生企業の資金繰りを安定させるためには、
こうした金融機関の協力、意見統一が欠かせません。
中小企業活性化協議会という組織
ここで、「中小企業活性化協議会」という組織を紹介します。
2022年4月に組織名が改名されて現行となっているのですが、
従前は「中小企業再生支援協議会」という名称で、
私たちは、「シエンキョウ」と略称で読んでいました。
中小企業活性化協議会
中小企業の活性化を支援する「公的機関」として47都道府県に設置されており、全国の商工会議所等が運営しています。 中小企業活性化協議会が地域のハブとなり、金融機関、民間専門家、各種支援機関と連携し、「地域全体での収益力改善、経営改善、事業再生、再チャレンジの最大化」を追求します。
収益性のある事業を有しているが、財務上の問題を抱えている中小企業者の再生を支援するため、2003年に中小企業再生支援協議会が創設され、長期にわたり中小企業者を支援してきましたが、2022年3月4日に「中小企業活性化パッケージ」が公表され、中小企業再生支援協議会は、経営改善支援センターと統合し、「中小企業活性化協議会」が設置されました。
中小企業庁HP
このいわゆる支援協は、第三者的な立場から、
再生企業と金融機関との調整、金融機関同士の調整を行う機関です。
公的な支援機関の音頭取りは非常に助かるのですが、
前回記載しましたように、
支援協にとって、金融支援はリスケ、であり、リファイではない。
こんなことも言われたことがあります。
(リファイを前提とする計画ならば)「支援協案件としてカウントしない。」
どういう意味なのか?いまだに意味が分かりません。
彼らにも支援件数といったノルマが与えらえているようです。
私が何度も中企庁や関係者との意見交換で、
金融機関の都合上、支援はしたいのですが、リスケを嫌がる金融機関もいるので、
リスケでもリファイでもいいじゃん、同じ効果だし
と説明しても、なるほど、なるほど、なんてメモを取るくせに、
結局、受け入れてくれないんです。
だから、
支援協が入る=リスケ=本部移管という経路が成り立ち、
支援協の介入をいやがる金融機関もいるというのが事実です。
リスケかリファイかを議題としているうちに、
ふと、それにからんだ事例を思い出しましたので、以下に紹介してみます。
支援事例:G社
某ファッション系の企業、仮にG社とします。
当社は、かつては、そこそこの優良企業としての取引先であったのですが、
先代の代取が亡くなり、急遽息子さんが承継しました。
息子さんが承継した以降も、順調に業容を拡大してきたのですが、
業容の拡大とともに、借入金も増加。
息子の時代に行った新規事業に失敗したあたりから、徐々に収益性が低下していきます。
そもそも借入過多で、返済負担も重く、資金繰りが急速に悪化してきて、
営業店の支店長から、ついに私の部署に相談が入りました。
当社の取引金融金融機関は、当行がメインでしたが、
シェアは結構均衡していて、政府系2行と、メガ数行の取引でした。
昔ながらの優良企業の特徴として、たまに見かけるのですが、
借入金とともに、各行に定期預金を積んでおりました。
この定期預金は、預金担保としているのもあれば、見合いとして預けているのもありました。
私はG社の直接の担当ではなく(課長職でもなかったので)、
再生支援のとっかりの当初は、横から見ていた程度でしたが、
メイン行である当行主導で、バンクミーティングを行い、支援方針を協議することとしたのです。
G社からの業況説明では、本業は問題ないので、
新規事業を撤退すれば、黒字転換可能ということでした。
当初の見立ては、新規事業を撤退するまでの間、資金繰りを支援すれば、
再生できる、という認識から、
金融支援策としては、各行年間の約定返済分を、「リファイする」としたものでした。
この背景には、
「せっかく政府系が前向き支援しているのだから、支援協によるリスケは避けよう」
という考えが働いたものです。
政府系2行は、当社が提案したリファイ案に、
メイン行が支援するならば
ということで、一応は従っていただきました。
しかし、メガ行は新規与信は難しく、また、リスケも私募債だからムリという回答でした。
(私募債は債務不履行となってしまうので、ローンで借り換えするしかないのですが・・)
その代替案として、メガに積んでいる定期預金と長期資金を相殺して、
資金繰り負担軽減したらどうか、と当行から持ち掛けました。
結局その日は、各行持ち帰り検討ということで、バンクミーティングは終了。
当社と政府系2行は、
メガの反応は厳しいだろうから、われわれ3行で協調して支援しましょう、と
G社の資金繰りも厳しい様相を見せていたので、3行のみ先行してリファイを実行しました。
(ここが判断の甘いところだったのですが・・・)
ところが、バンクミーティング終了後のメガからの回答は、
定期預金の相殺は、
長期資金(私募債)ではなく、短期資金(当座貸越)の内入れに充当する、
というものでした。
理由は、金利が当座貸越の方が高く、G社にメリットがあるというものでしたが、
それはただの方便で、約定回収を進めていきたいという思惑なのでしょう。
しかし、それではG社の資金繰り負担軽減になりません。
リスケもできない、ましてや定期相殺も意味ない、とは・・・
メガの返済負担分を、当行と政府系2行で支えられるか?
G社の協調支援は暗礁に乗り上げてしまったのですが、
ここからさらに泥沼の交渉劇の始まりとなっていきました。
そして泥沼化していく・・・
この頃から私が課長職となり、当社の案件の引き継ぎを行いました。
しかし、G社から提出される資金繰り予想が、毎月毎月悪化していくのです。
当初の見立てでは、新規事業さえ撤退すれば、本業は大丈夫という話でしたが、
なんと本業も、主力取引先からの受注減少により、ここ数年厳しい状態が続いていたのでした。
なんだこれ?
まったく最悪なことに、この事例は、私がこれまでさんざん述べてきた、
「窮境要因の特定」がないまま、金融支援を実行していたのです。
しかも、バンクミーティングまで開いて、
メイン行である当社は、他行に協調支援まで呼びかけて、・・・・
これはまったくダメだ。
このままではG社は資金繰り破綻する、と危機を察した私は、
支援協に介入してもらって、金融支援策を考え直そう。
と思い、即座に動き始めました。
なにをしたかというと、
社長と営業店長と私とが3人で、
各金融機関に対し、足元の状況を説明するとともに、
協調リファイするという支援方針を、
支援協介入によるリスケに切り替えましょう、と説得して回りました。
各行の反応はといいますと、
政府系2行は激昂です。
御行がリファイするといったから、新規融資実行したにもかかわらず、
すぐにリスケしてくれとはなにごとだ。
そこまでいうなら、リファイした分は御行で肩代わりしてもらいたい。
われわれは御行に梯子をはずされた。
メガ行は、
おかしいですね。
先日のバンクミーティングでは、新規事業以外は問題ないと言っていたのに、
そうすると当社の数字に信憑性がおけません。
政府系2行は怒り心頭で、G社や当行に乗り込んできて、文句を言うし、
メガは、バンクミーティングの数字と業況がここまでかけ離れるなんて、
当社の開示資料に対する不信感を露わにして、
要するに足並みが揃うどころか、分解してしまうところでした。
なんで私がここまで言われなければいけないのかと思いながらも、
メイン行である当行の組立不足であったことは否めず、
各行に対し、平謝り、平謝り、それでも各行の同意を得ることはできませんでした。
各行から総スカンをくらいまして、さすがにどうしようと途方にくれました。
課長に就任したばかりの私を試すかのような出来事です。
長くなったので、次回に続きます。
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