こんにちは#ひろとし課長#です。
前回、ひょんなことから金融調整が泥沼化してしまった事例、
について記載しましたが、今回はその続きです。
「リスケ」を嫌う金融機関に配慮して、
支援協抜きのメインバンク主導で、協調リファイスキームを描いたものの、
メガ行の賛同得られず、
しかも当初の想定以上に、企業の業況は悪化していた。
当初の見立てが甘いうえに、見切り発車での金融支援策立案、
それを他行さんに支援要請までしてしまうとは、
こりゃあ、今思い返してもダメダメでしょ。
支援協議会スキームに切り替え
まったく言いたいこと、言いやがって。
そんなにスキームが気に入らいないならば、
政府系2行を当行が肩代わりしてやる。
政府系が再生支援に非協力的だと、訴えてやる。
と、まあ私もしばらくは、怒り心頭であったわけですが、
当行としても、無担保で業況悪化先の融資を肩代わりなどできるはずもなく、
いろいろ、いろいろと、考えた結果ですが、
やっぱり、再生支援協議会に相談することとしました。
通常、支援協が仲介して金融支援を行う場合、
前も述べたように、とりあえず、「ゼロリスケ」を行います。
これは企業の資金繰り維持という観点がもちろんなのですが、
金融機関の衡平性を確保する、という考えもあるようです。
しかし、今回のケースでは、政府系2行は、足元で新規与信を対応したばかりでありますので、
リスケなど、認めてくれるはずもありません。
そこで、
支援協に金融調整をお願いしますが、ゼロリスケは政府系に納得してもらえない。
なんとか彼らのほとぼりが冷めるまで、約弁を続けさせてやってほしい。
しかし、そんな悠長なことを言っていたら、資金繰りが持たないこととなり、
すぐにでもなんらかの金融支援を行わなければなりません。
他行がバラバラな状態の中で、さすがの私でも担保もない赤字資金など、対応できるはずもなし。
そんななか、支援協さんから出された案は、
担保として拘束していない定期預金の解放をお願いしましょう。
どの債権と相殺するというのではなく、とりあえず、G社の手元資金として使わせましょう。
と、アドバイスをいただきました。
そもそもことの発端は、
メガ行の定期預金相殺について、どの債権に充当するか、
ということから始まっていたので、
メガ行が簡単に定期預金の開放に応ずるはずなし。
そんな要求は、まず無理でしょ・・・。
と思っていたのですが、
支援協さんが、とにかく言ってみないとわからない、というので、
各行に話を聞いてまわってもらいました。
G社の資金繰り支援のため、定期預金の中途解約させてください。
正式に担保としていない定期預金の解約を拒むことは、問題があるのではないでしょうか?
・・・・
それに応じないとまずいのですか・・・
そりゃ、まずいでしょう。
メガは、本部と協議するとしてからしばらくして、
なんと、担保として拘束していない定期預金を全額中途解約に応じてくれたのです。
さすがに私は、まさか、と思ったのですが、
支援協という公の機関からの説得に、メガ行は従ったという、
このおかげで、しばらくの間はG社は資金繰りを維持することができたのです。
このケースでは、ホントに支援協さんに救われた、という感じでした。
再生支援の現場
さて、とりあえず定期預金の解放ができたことで、
少しは資金繰りに余裕ができたので、この間は、計画策定に着手しました。
社長と再度の目線合わせを行い、
銀行も必死に支援するので、企業も必死に改善努力すること、
あと、このようなギリギリの局面において、
当行が言ったこと、行ったこと、他行から言われたこと、
一生忘れないでください!
なぜこんなことを言ったかといいますと、
再生の局面で、メイン行があれほど支援したにもかかわらず、
再び業況が良くなった途端に、他行からの低レート攻勢に目が行き、
いつしかメイン行の支援したことなど、忘れさられてしまうことが、よくあるからです。
よく覚えておくように
そして、外部専門家を使い、DDの実施と計画策定。
(当初にこれをやるべきであった)
社長とのヒアリングや、専門家のDDを進めていくにしたがって、
当社の業況悪化要因、いわゆる窮境要因が分かりだしてきました。
当初は、新規事業進出による赤字、ということがメインだったのですが、
そのほかに、
主要取引先からの販売減少、外注部門を内製化したことによる固定費の増加、
そして、従業員アンケートをした結果、
部門間の従業員不和、管理職のパワハラ、などなど、
現場を訪問しただけではわからない、事情も浮かび上がってきました。
窮境要因が分かってきたのですが、それが除去できるか、どうか。
特に、人の問題は深刻です。
中小企業の場合はもとより人材不足、
問題の人を替えれば、といっても、替えの人材がまずいません。
また、その人が実はキーパーソンであることも事実で、その人が辞めてしまったら、
取引先、仕事のノウハウ、その人しか知らないものが失われ、
またその人を慕っていた子分たちが、一斉にいなくなってしまうことも、考えられます。
人の問題を改善計画の骨子に掲げること、
これって再生計画の中でも、
実現していくことが難しい課題であると思っています。
仲直り?
さて、外部専門家を使って、DDが完了。
人の問題が絡んでいるので、計画の方向性は示されても、実現可能性が?
という疑問は残りながらも、そうは言ってもこれで行くしかないか、
ということで、計画策定まで進めることとなりました。
と、その前に、
他の金融機関に対しても、現状説明と今後の支援協力要請をしなければならず、
支援協議会主催のDD報告会(バンクミーティング)を開催する運びとなりました。
(当然の流れなのですが)
これ以前に、支援協議会が介入する旨を伝えるとして、
支援協が政府系を訪問したところ、
よろしくお願いします。
われわれはメイン行に梯子をはずされた。
リスケに応じるつもりなどない。
と、ご立腹だった様子。
このまま、バンクミーティングにに突入すると、
当たり前ですけど、喧嘩となってしまうことが必至でしたので、
バンクミーティング前に、支援協さん仲裁のもとで、
当行と政府系が話会うこととしました。
とりあえず、DDの結果を一通り説明、
人の問題が絡んでいるので、計画の実現はなんとも言えないが、
やってみる価値は十分にある、G社の再生の可能性は十分にあると、主張しました。
そこは理解していただいたのですが、問題は金融支援のところ。
計画実行の金融支援は、CFが出るまで返済は止めなければなりません。
政府系さん、それをご理解いただけませんか?
われわれもG社の再生支援に対して否と言っている訳ではない。
新規融資を実行して、すぐに返済を止めるなど、当初の審査はなんだったのかということだ。
メイン行がリファイ資金を出せばいいのではないか?
当初の見立てが甘かったことは申し訳ないと思う。
当行は、計画成立時には赤字資金として新規融資を実行する考えだ。
ただし、G社のCFがプラスに転じるまで、返済は止めるべきだ。
金融機関としていろいろな考え方はあるでしょうが、
ここはG社の資金繰りを優先して考えてほしい。
・・・・
メイン行がそこまで支援するというならば、わかりました。
本部と協議してみます。
当行は、計画が成立時に赤字資金を実行すること、
さらに期中収支ズレが発生した場合、追加の運転資金を実行すること、
あくまで、積極的に金融支援をしていくこと、を主張したところ、
われわれの本気度を理解してくれたのか、
また、政府系という立場上、金融機関協調を妨げることがあってはならない、
ということなのか、支援協スキームに応じてくれることになりました。
政府系が新規実行したのちに、当行がリスケを提案する、という
彼らからすると、当行の裏切り行為だとみたのでしょう。
私は、誤解を与えてしまったのは本当に申し訳ないことだったと、
当初のやり方が間違っていたことについて、大いに反省しました。
(私がやったのではないのですが)
これ以降は、G社の再生案件にはとても協力的でありました。
この政府系の課長さんとは、G社に限らず、
その他の案件においても、密に情報交換するなど、
彼が転勤するまで、親密な関係を構築することができました。
彼が転勤後も、今も政府系さんとは、よい関係で仕事をしております。
他の金融機関の職員とは、業界的に、通常はあまり手の内を見せない、
お互いライバル同士でもあり、
どことなく、距離を置いた関係になってしまうものですが、
時に再生の現場というのは、銀行員と社長、金融機関同士、
信頼関係を作っていかないと、ことが成就するはずがありません。
ましてや、いがみ合っているなど、あり得ないことです。
お互いの立場やプライド、メンツといったものも大事なのはわかります。
それは、お互い認めたうえで、協調体制を作っていくことが大事なんですね。
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