こんにちは#ひろとし課長#です。
これまで、事業再生計画の作り方について、専門書とは違う切り口(#ひろとし課長#流)で、
述べてきましたが、そろそろ終わりに近づいてきました。
今回のテーマは、プロラタについて、考えていきたいと思います。
プロラタとは?
再生のステージにおいて、「プロラタ」という言葉を聞いたことがあろうかと思いますが、
プロラタ方式とは、会社が複数の金融機関から借入をしている際に、借入金額に応じて比例的に返済額を決めて、返済することをいう。プロラタとは、「比例配分できる」という意味の言葉(Proratable)の略称。リスケジュールを実行する際に、複数の金融機関の間で不公平が生じないように、このような方式がとられる。
要するに、返済方法を「ある法則」により比例配分するということです。
複数の金融機関と取引がある場合、残高はもちろん融資の返済方法によって、
毎月、年間の返済額は、金融機関によってまちまちです。
再生企業がリスケをお願いする場合、金融機関が足なみを揃えない限り、
企業の資金繰りが回らないことは前に述べました。
少ないCFの中で、当初約定の返済額を継続することはできないために、
企業は返済額の軽減を求めます。
金融機関としては、業績悪化企業から、融資金を早期に回収したいと考えます。
うちは当初約定以外は認めません、うちは5年で回収できる返済額が精一杯です、
メイン行から調達をお願いし、当行はこのままにしてほしい。
こんなこと聞いていたら、社長は仕事にならないだろうし、
そのままですと、資金繰り破綻するに決まっています。
こうした金融機関同士の軋轢をふせぐため、ある意味、納得できる、公平的な返済方法として、
プロラタ返済という基準があるのです。
残高プロラタと信用プロラタ
ちなみにプロラタ返済には、金融機関の残高按分による①「残高プロラタ」と、
担保によりカバーされていない分(非保全残高分)を按分した②「信用プロラタ」とがあります。
通常の場合は、①の残高プロラタを基準とするのが一般的なのですが、
残高プロラタは、担保(保全)の考えを一切排除しているので、メイン行と下位行の場合、
メイン行は圧倒的に保全カバー率が高く、一方で下位行は非保全の割合が多くなるケースがあります。
これが衡平(公平)?という意見も確かにあるのですが、
残高プロラタがやはり一般的な考え方となっております。
ちなみに信用保証協会の無担保分については、
信用保証協会も「いち債権者」として数えられ、
協会無担保扱いの場合、保証協会が非保全債務者という位置づけとなります。
一方で、②信用プロラタはなにかというと、
債権放棄などカットスキームに用いられる考え方です。
なぜカットスキームの場合に適用されるかといいますと、
保全分は別除権扱いとして、カットの対象とならないためです(あたり前ですが)。
別除権 (べつじょけん)とは、破産手続、民事再生手続に左右されずに、実定法上の担保権の対象となる財産等(担保物権)を処分することで回収をすることができる権利のこと。 別除権を有する担保権者を 別除権者 という。 別除権は、破産手続によらないで、行使することができる。 担保権(特別の 先取特権 、 質権 又は 抵当権 をいう。 以下この項において同じ。 )の目的である財産が破産管財人による任意売却その他の事由により 破産財団 に属しないこととなった場合において当該担保権がなお存続するときにおける当該担保権を有する者も、その目的である財産について別除権を有する。
Wikipedia
抜本再生におけるカット率というのは、無担保融資分をどのくらいカットするのかという割合であり、
金融機関ごとの債権カット額は、無担保分の残高シェアに応じて決められます。
メイン寄せ
メイン寄せ、というものが昔は横行したようです。
多額な融資金を有するメイン行は、融資が多額で、対象企業をつぶせない、
また地域金融機関として、支援をしなければいけないので、引くことはできない。
それにつけこんだ(言い過ぎ?)下位行は、
「うちは回収方針ですので」といって、
自行の方針を主張し、
返済の据え置き等はメインにまかせ、
自行はさっさと回収に走る、という構図が一昔前は見受けらえたようです。
これを是正するために、「私的整理ガイドライン」や「再生支援協議会」等による金融調整が
制度として成立し、先ほど述べた「残高プロラタ」のような考え方が一般的となりました。
しかし現在においても、圧倒的なメイン行と下位行との間において、
シェアが異なりすぎる場合、完全な残高プロラタでやってしまうと、
返済額はメイン行が圧倒的で、
下位行の回収額が年間数千円、なんてケースも出てきてしまう。
これではさすがに、下位行もかわいそうであるとして、メイン行の方から、
少額債権者の分は、メイン行のシェアを少し譲ります、とするケースもあります。
そのほうが、メイン行も下位行の抵抗を軽減することができ、
下位行がスムースに計画に同意するために、行うケースがよくあります。
衡平性とは?
再生用語で、「こうへい」とは、
公平(フェア)ではなく、「衡平」という文字を使います。
衡平性は確保できているので、計画に同意します。
というようなフレーズを使うのですが、
衡平とは、要するに「つり合いが取れていること」をいいます。
単純プロラタの場合、先ほども言いましたが、
メイン行の融資シェアが大きく、かつ保全カバー率も大きいことから、
下位行としてはおもしろくありません。
これが衡平といえるか、といいたくなるでしょう。
この場合、先にも述べましたが、残高プロラタを基準に、メイン行の返済を少し分けてやる。
衡平とは、双方(当事者)が納得のいくようなつり合いにすればよいのです。
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