こんにちは、#ひろとし課長#です。
前回の事例は少し熱くなって、ついつい筆がすすんでしまい、
続編としてしまいました。
その続きを以下示します。
支援協とのやりとり2
今回は、
当行がS社の特例リスケ計画に対し、「条件付き承認」
支援協(現活性化協議会)の考えでは=不同意
したことにより、
支援協の統括責任者とこのサブマネが当行と直接意見交換するべく、
営業店を訪問してきました。
ところが、たまたま私はスケジュールが合わず、
残念ながら、その場に同席することかなわなかったのです。
営業店担当から、当行の方針を再度回答したところ、
「在庫を確認するって、どれだけ確認すれば気が済むのですか?」
「私の経験上、確認したところで、わからないケースがほとんどですよ。」
「(定期預金の中途解約は銀行の期限の利益である)そんな理屈が通ると思っているのですか?」
「ならば、満期が来たら解約してくれるのですか?」
「いまはコロナ禍なのに、そんなことを言っている場合ですか?」
とまぁ、営業店に対し、横柄な態度でまくしたてたようです。
この担当のサブマネは、一方的に当行に否があるといい、
結局、
サブマネ
もう一度考え直してください
とピシャリ。当行に再考するよう求めました。
営業店から支援協とのやりとりを事後で報告を受けた私は、
さて、どうしてくれようかな
と、怒り沸々と、対策をねっていました。
思い出しただけでも腹が立つのですが
金融機関が、支援協さんの計画に同意しない、
もしくは難色を示すと、こんなメールやら通知が来ます。
「計画に不同意の場合は、文章により回答すること」
「条件付き同意は、不同意とみなす」
「計画不成立、不同意の場合は監督官庁に報告する」
この文章見てどう思います?
支援協さんの上層部、また全国都道府県の統括責任者のほとんど、金融機関OBです。
つまり、金融機関の泣き所をよくご存じなのです。
文章にて提出すること、監督官庁に報告します、
これって、金融機関の職員ならばおわかりでしょうが、
とってもナーバスになるフレーズなのです。
しかも、再生支援協議会は経済産業省・中小企業庁の管轄で、公の組織です。
いわゆる「御上に対して、逆らう」ことって、
通常の金融機関職員にとっては、とってもハードルが高い。
なんてったて、後々面倒くさい。
そうするとどうなるのでしょうか?
ここは、当行だけが逆らったところでどうにもならない、とか
これ以上手間暇かけても得はない、とか、
金融機関職員は、まじめで大人しい人が多いので、
このように言われると、なんか自分が悪いことをしているかのように思い、
なんとなく丸く収めてしまおう的に、
次第に同調するようになっていくものです。
こんな議論を続けている間にも、在庫のDDくらいできそうなものなのに。
営業店の支店長と本件対応をどうするか協議したところ、
支店長の考えは、
- 基本S社の再生支援に協力していきたい
- ただし、当行の主張が間違いだとは思わない
- 支援協の文章とあのサブマネの態度は気に入らない
要するに、当行も支援と保全というギリギリのところで検討しようとしているのに、
支援協の「黙って言うことをきけ」的な対応には納得できない、ということです。
支店長の意をくみ、私も相当考えました。
落としどころ、着地点、妥協点
私だって、単に「駄々をこねる」つもりはなく、
他行もみな「諾」としている以上、最終的には「公」の裁定には従うつもりではいるのですが、
やはり主張すべきは主張すべきだと、いうことで。
このようにしました。
当行の基本方針はS社支援方針。
当面は、資金繰りさえ繋がればよいわけなので、
定期預金の中途解約は資金ショート発生が予見された場合に限る。
S社は、メイン行により商業手形割引(これ以前は割引もしていなかった)をお願いする、
ことも含め、資金繰り維持に関する、自助努力を行う(当たり前なのですが)。
これが前提として、支援協の計画に同意します。
ということを、支援協議会の統括責任者に、私が直接伝えにいくことにしました。
統括責任者との面談
支援協議会に訪問する前、
もしかしたらケンカになって、当行と中企庁の間で面倒くさいことなるかもしれないなぁ、
ということで、上層部にはいちおう報告しておきました。
一方的に言いたいこと言って帰ってきますが、
くれぐれも喧嘩はしませんと。
当日は、当行は、私と営業店担当者2名
先方は、統括責任者
そして、態度の悪いと言われていたサブマネ
こいつか。
と私は、怯むことなく臨戦モード、一気にまくしたてようと思ったのですが・・・
わざわざお越しくださいましてすみません。
この統括責任者が、当方の気をそぐように、
世間話やら、当行との過去のやりとり、など、気さくに話をしてきました。
緊張を解きほぐすために日常会話から始める、たしかにビジネス話法として鉄則です。
私は、なんやら拍子抜け、いわゆるケンカ腰が少しほぐれてしまいました。
そこで少し冷静に、
私は、S社に対する当行の方針、
「基本的にはS社の再生支援に協力する。」
そして、定期預金の中途解約の考え方、
「定期預金の中途解約は当行にも期限の利益がある、
業績悪化、粉飾懸念のある企業に対しては、簡単には応じられない。」
そうは言っても、資金繰り破綻してしまったら意味がない、
「解約に応じるか否かは、S社の資金繰り状況を見て、都度検討する。」
そして、
支援協議会の今回の対応について(ここからは私、ヒートアップしたのですが)、
当行も金融機関として、貸手責任があるのと同時に、自行利益は守らなければならない、
ギリギリの検討しているなかで、今回のように「一方的なものの言い」はいかがなものか?
黙って言うこと聞け的な物言い、
あまりにも一方的すぎるだろ
ましてや当行の本部ならばともかく、営業店の一担当宛に、
「監督官庁に報告する」などというようなメールや文章を送るなど、
高圧的、威圧的な対応に甘んずるつもりは毛頭ない。
今後は対応を改めてもらいたい
すると、この統括責任者は、
大変申し訳ありません。配慮が足りませんでした。
統括責任者は、軽くですが、詫びの言葉を述べ、
金融機関と議論が足りなかったこと、威圧的な対応などするつもりなどないこと、
「案件が多いので、ついつい結論を急いでしまいました。」
「今後ともサブマネの対応の悪さなど、支援協の意見があればどんどん言ってください。」
と笑顔で、というより、議論ができてうれしいような感じで、話を聞いてくれました。
当初訪問するときは、どうせ聞く耳もたずだろうから、
一方的に言いたいことを言って、その場を離れようかと、思っていたのですが、
この統括は、どうやら金融機関と、もっと積極的に意見交換をしたかったようです。
この方も、メガバンクのOBで、相応の地位にいた方なのでしょう。
見た目(失礼ですが)よりも、人間ができている印象でした。
ちなみに、
この人は、同席しながら何も発言なし。
たぶん、公が言えば、金融機関はペコペコ応じるとでも思っていた、
勘違いヤロー、だったのでしょうかね。
その後、この統括と当行の再生支援の取組みなど、穏やかに話をしまして、
失礼な物言いしまして、申し訳ありません。
と、一応謝罪の言葉を述べて、退席しました。
その後、
当行は、S社の計画に同意(といってもコロナ特例リスケですが)。
資金繰りも、メイン行にお願いして商業手形割引を実行。
当行の定期預金解約は行われることはありませんでした。
(私が課長在籍中までの話なので現在は?それと在庫は粉飾だったのかどうか?)。
教訓
今回の事例は、
定期預金の中途解約は必ずしも応じる必要があるわけではない、ということ。
業況が悪化、粉飾等、デフォルトリスクがある場合、慎重に検討するべき。
なお、さらに言うと、こうした争いを避けるためには、
定期預金が担保として見ているのならば、正式に担保として徴求するということが重要です。
お互いに、あいまいな取り扱いにはしない、ということ。
また、再生支援協議会(現活性化協議会)は、公の組織でありますが、
法的な強制力などがあるわけではありません。
時には金融機関と利害関係が対立することも多いです。
金融機関は、まず貸手として、その企業の対応方針を検討し、自行独自で決定する。
支援協議会に対しては、あくまでも前向きに協力するというスタンスだと思います。
支援協の方針がすべて、だなんて思われていたら、たまったものではない。
事業再生は、企業と金融機関の信頼関係があってこそ、実現できる、
この根底を覆すこととなってしまいます。
それにしても、S社はいまどうなっているのかな?
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